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松田宣浩がこだわる“熱男”の愛称。
WBCのモヤモヤから優勝までの苦闘。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2017/12/22 11:00

松田宣浩がこだわる“熱男”の愛称。WBCのモヤモヤから優勝までの苦闘。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

ベテランの域に差し掛かりながらも、「全試合フルイニング出場」の目標は変わらない……。

“松田熱男”として、全国区の人気者に!

“松田熱男”は、野球ファンのなかで市民権を得たわけだが、全国的に「松田=熱男」が知れ渡ったのは、やはり今年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)である。

 1次ラウンド初戦のキューバ戦で豪快なアーチを描き、東京ドームの観衆と大合唱した「アッツォ~!」は、実に壮観だった。

 ただし、この大会ではそれが松田の全てではなかった。準決勝のアメリカ戦での“あの”プレーのほうが、むしろ日本人の脳裏に焼き付いているのかもしれない。

 1-1の8回、1死二、三塁。サード前のハーフバウンドを松田がファンブルする。

「気づいていたら弾いていた」

 三塁走者の生還を許し、日本は結局、この1点で敗れた。今でも、エラーのことを聞かれると表情が硬くなる。無理もない。苦い経験がフラッシュバックし、居心地の悪さとなって心を揺さぶるからだ。

 松田が静かに振り返る。

「今思えばね、恐怖感とかドキドキ感っていうのがありながら守ってはいました。野球の本場で、アメリカ代表の選手はバリバリのメジャーリーガー。『こんなに力が上の選手がいるんだな』って思った。

 こっちもバリバリの日本代表だけど、球場はドジャースタジアムだったし完全アウェーじゃないですか。日本の球場より慣れていなかったのもあるのかもしれんけど、緊張感だったり、そういうのを感じながらプレーしていましたね」

WBCの「モヤモヤ」のせいか、打撃不振に。

 WBCが終わり、松田はすぐさまソフトバンクの選手としてシーズン開幕を迎えた。

 モヤモヤ。

 松田がそう表現する心のわだかまりは、4月まで続いた。29日までの打率は2割8厘。

「なんでだろう?」

 自問自答が続くなか、自分に足りないものの断片が見え始めたのは、30日のオリックス戦で放った今季第1号だった。

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松田宣浩
福岡ソフトバンクホークス

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