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リプレー検証の気になるグレーさ。
野球ファン納得の運用法を考える。 

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byNaoya Sanuki

posted2017/11/29 11:30

リプレー検証の気になるグレーさ。野球ファン納得の運用法を考える。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

あれだけの映像が駆使されても判断が難しいケースがある。リプレー検証の難しさを象徴する日本シリーズのクロスプレーだった。

120台のカメラをもってしても決定的瞬間は……。

 各紙が報じたコメントで共通しているのは「確認できた」という文言が入っていることだが、スポニチが伝える「ミットの位置と、ホームベース上で走者の手がどの程度浮いていたのかを確認した」という部分、朝日新聞が伝える「位置関係などを確認した」という部分には引っ掛かりを覚える。「目視で確認できる状態をもとに、その先の状態を“推測”して判断した」とも読めるからだ。

 リプレー検証にはテレビ中継用の映像が利用されるが、この試合は偶然にも、野球中継史上最大級となる120台のカメラを駆使して放送されるという触れ込みだった。だが、それだけの台数のカメラをもってしても、筆者の知る限りでは決定的瞬間――今宮の指先がすでに本塁に触れており、戸柱のミットはまだ今宮の体に触れていない“セーフの瞬間”――を捉えた映像はなかった。

 ツイッターなどを覗いて見ても、リプレー検証の最中から、試合が終わった後まで、“アウト派”と“セーフ派”が真っ二つに分かれていた。何より、そういう映像があれば判断はすぐにできるので、リプレー検証にあれほど時間がかかることもなかったはずだ。

グレーな余地をルールに残す意義は見えない。

 冒頭に紹介した「確証のある映像がない場合は審判団の判断とする」という文言は、“推定”による判定を認めることも意味する。つまり、アウトを宣告、リプレー検証に入ったが確証のある映像がない、それでも審判団が「この流れでいくと先に走者の指が入ったであろう」と判断すればセーフに覆ることもある、ということだ。

 だが、本当にそれでいいのだろうか?

 まず大前提として、プロフェッショナルの審判が即時にジャッジを下す。その判定には絶対的な優位性があって然るべきだ。ただ、審判も人間である以上は見誤ることもある。それを補う手段としてリプレー検証が行われる。

 だとするならば、「確証のある映像がない場合は、原則として元の判定を適用する」のが筋ではないだろうか。客観証拠を求めて別室にこもり、客観証拠は得られなかったが(主観的判断によって)判定が覆る。そんなグレーな余地をルールに残しておく意義は見えない。客観証拠を得られなかったのなら、主観や推測を重ねるのではなく、元の判断に立ち戻ればいいだけではないか。

【次ページ】 今後の運用方針に対して、2つ“リクエスト”。

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