マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
安田尚憲こそこのドラフトの盲点だ。
清宮よりも基本に忠実なことが宝。
posted2017/10/24 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
ドラフトとは、巡り合わせと縁である。
清宮幸太郎(早稲田実業高)と同じ年に生まれていなければ、もっと大きな存在として注目されていてぜんぜん不思議はない。そんな“超”の付く逸材が履正社高・安田尚憲内野手であろう。
188cm92kg。均整抜群の体格に、インサイドアウトの理にかなったスイングから放たれる打球はその飛距離、スピード共、すでに十分プロのレベルに達している。
何より、打球の方向がいい。
バックスクリーンから左中間方向へ、高い角度の放物線ではなく、どちらかというとライナー性の浅い角度で伸びていく打球は、“逆方向”なのにライトに引っぱった打球より、むしろすばらしい逆スピンで伸びていくように見える。
逆方向へも距離が出せるのが、本当の長距離打者だ。
清宮はオリジナリティ、安田はお手本。
清宮幸太郎のバッティングは、一見して興味深い。オリジナリティの塊だからだ。
おそらく彼は小さい頃から、人にバッティングを教わっていないのではないか。
自分の目で見た多くのバッターたちのエッセンスを彼の感性で自分の中に取り入れて、自分のバッティング技術として構築してきたはずだ。そうでなければ、ああした個性的なメカニズムにはならない。
打席に入ると、いつの間にかもう右足首でタイミングを取り始めている。
人からこうやって打てと教えられたその通りを“なぞって”打とうとする人工的な窮屈感。それが、まるでない。
振りたいように振っている。その自然体な伸びやかさも、多くのファンや関係者の心を捉えて離さない理由の1つと考えている。
一方で、誰がお手本にしてもよい振り方が安田尚憲だろう。
とりわけ、始動を早めにとったゆったりとしたボールの呼び込み。こうした時間をかけたタイミングの取り方は、特に小学生、中学生の野球初心者には格好のお手本であろう。