マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト当落選上の野球巧者たち。
亜細亜大と九共大のじれったい2人。
posted2017/10/23 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Takashi Hamanaka
こういう選手が、いちばんわからない。
走る、投げる、打球を飛ばす。身体能力にこれといった強烈な特徴は見えない。しかし試合になると、実にいい仕事をしてくれる。
送りバントだって、やりにくいボールに無理して手を出すことなど絶対になく、ボール3つ見極めて投手をいじめておいて、四球がいやでストライクをとりにきた次のボールを絶妙の殺し方で、ライン際に転がしてみせる。
同点の終盤、1点でもいいから! と願う場面では、守る4人の内野手の間隔のいちばん広い場所を狙って、そこに強いゴロを放ってタイムリーにしてしまう。
なかでも、目がいい。
ストライク-ボールの選別がまず正確。際どいコースを見送って、この選手が「ストライク!」を取られた場面をほぼ見たことがない。
その選手が見送ったら「ボール!」。……まさか、審判たちがそう決めつけているわけでもないだろうが、それぐらい“キワ”を見定める目がきびしい。さらには、打つべきボールとその場面では打ってはいけないボール、その選別の正確さのほうがこの選手の選球眼の真骨頂といってよいだろう。
併殺だけは避けたい場面で、低めの“沈む系”をしっかり捨ててカウントを投手不利に持ち込み、じれた投手が投げ損じた高めの沈む系を、待ってました! と快打にして、打線をつなげる。
とにかく達者。でも、ピンと来るものがない。
打つだけじゃない。
見た感じ、ちょっと重そうな体格なのだが、正面の高いバウンドにも一気に突っ込んで勝負をかけて、そんなに軽快にも見えないのだが、ヒョイとジャンピングスローでアウトにしてしまう。
とにかく、野球上手。とにかく達者。
試合を作れる投手というのは、最近の投手たちがさかんになりたがる1つの理想像だが、ここに「試合を作れる内野手」というのがいる。
しかし、そのわりに、鮮やかに打球をさばいてポジションに戻っていく姿に、鮮やかなジャストミートで一塁へ走っていくその姿に、ピンと来るものがない。
こういう選手が、いちばんわからない。