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井口資仁、現役生活21年間の意味。
「指導者向き」を証明するエピソード。

posted2017/09/27 11:30

 
井口資仁、現役生活21年間の意味。「指導者向き」を証明するエピソード。<Number Web> photograph by Kyodo News

引退試合の後、セレモニーでZOZOマリンスタジアムを一周してファンに感謝を伝える井口。

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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Kyodo News

 打球がセンター右後方に上がった瞬間、ZOZOマリンスタジアムに詰めかけた30,096人の観客が一斉に声をあげた。

 様々な想いと共に、高く上空に舞い上がったボールは、一押し、もう一押しと、ファンの声にあと押しされたかのようにスタンドに向かってぐんぐんと加速する。

「シーズン中はあそこの打球が失速していたんですけど、今日は自分の想いだったり、みんなの想いだったりが、打球に伝わってフェンスを越えてくれたんじゃないかなと思います」

 2017年9月24日、この日で21年間の現役生活の幕を閉じた千葉ロッテ・井口資仁の日米通算295本目の本塁打は、そんな多くの人の願いと共にセンターバックスクリーン右横のスタンド最深部に突き刺さった。

 井口が引退を表明したのは6月20日、その会見の席で井口は「素晴らしいファンの前でプレーできている。自分の力を出し切りたい。ずっと応援していただいたファンの方々に、1試合でも多くユニフォームを着ている姿を見てほしい」と語っていた。

 そこからの約3カ月間、井口は自主トレ先の沖縄、かつて自分がプレーした福岡をはじめ、自分を応援してくれた全てのファンに、今の自分が出し切れる最高の姿をみせようと走り続けた。

二軍の若手に交じってロッテ浦和球場で汗を流す。

 8月27日のソフトバンク戦をひとつの区切りとして、井口は一旦一軍登録から外れたが、そこには「残り試合、若手をもっと(一軍で)起用してほしい」という井口たっての願いと、もう一度だけ自分らしいバッティングをファンに見せたいという強い想いがあった。

 追い求めたのは彼の代名詞ともいうべき右中間方向への一発。

 自らもこの期間を“キャンプ”という言葉で表し、あらゆる点で自分を見つめ直しながら、二軍の若手に交じってロッテ浦和球場で汗を流した。

【次ページ】 「これからも次の目標に向かって、しっかりと」

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