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バスケ日本男子、歴代最高の成績。
U-19W杯で世界を驚かせた戦法とは。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byFIBA

posted2017/07/12 17:00

バスケ日本男子、歴代最高の成績。U-19W杯で世界を驚かせた戦法とは。<Number Web> photograph by FIBA

'99年以来18年ぶりの出場となったU19日本代表。エース・八村は1試合平均20.6得点で得点ランキング2位に入った。

マリ戦ではシェーファー・アヴィ幸樹という新星が。

 とはいえスペイン相手にどれだけ善戦しても、マリ戦に負けては意味がない。そのマリ戦では八村が3Q半ば、37-40の3点ビハインドの場面で早くも4ファウル目を吹かれる苦しい試合となった。

 競り合ったスコアの中でエースの八村をベンチに下げざるをえないという苦境を吹き飛ばしたのが、八村と代わって出場したシェーファー・アヴィ幸樹だった。身長は203cmと八村と並ぶ長身だが、バスケ経験わずか3年の選手だ。日本のインターナショナルスクールでプレーしていたところを抜擢され、去年のU18アジア選手権から代表入りしている。なおシェーファーは現在アメリカ留学中。秋からはジョージア工科大に奨学金なしのウォークオンとはいえ、入学が決まっている。

 シェーファーの活躍とアジアを戦いぬいた選手たちのまとまりで、八村がベンチに下がった直後に逆転するどころかリードを広げた。4Q半ばに八村がコートに戻ってきたときには8点リードを取っていた。その後、再び追い上げられたが76-73で逃げ切り、狙い通りに1勝をものにした。

日本男子バスケ初のベスト8を懸けた決戦の前に……。

 マリに勝った後の狙いは、2試合後のトーナメント1回戦。グループ3位となった日本のトーナメント1回戦の相手はイタリアだった。ヨーロッパの強豪だが、勝てる相手だという手ごたえがあった。勝てば、男子日本代表としては初の世界ベスト8入りだ。

 試合前、ロッカールームには日本の国旗が掲げられ、ロイブル・ヘッドコーチは選手たちにこう言った。

「きょうはこのU19のチームのためだけにプレーするのではなく、日本の国全体のために戦おう。勝てば世界でトップ8に入れる歴史的な試合なのだから」

 選手たちも自信をもって試合に挑んでいた。

「試合前にトーステンから、ベスト8に勝ち進むには一番いい相手じゃないかという話があった。昔とは違って、今はみんなヨーロッパのチームとのほうがやりやすいと言って臨みました」と八村は語った。

 この試合でも、鍵となったのはディフェンスだった。約束事を徹底したディフェンスは、このチームにとっての肝。それまでの日本チームがよくやっていたような、速攻狙いの打ち合いでは世界を相手に勝てないという信念のもと、相手チームを徹底してスカウティング。それまでの試合でもほとんど、ディフェンス・ローテーションのミスなくできるようになっていた。

 このイタリア戦でも、インサイドを固め、2人のシューターだけ外でもマークするという約束を守り、相手オフェンスを抑えた。特に圧巻だったのはイタリアをわずか6点に抑えた2Q。前半が終わって29-21と日本が8点リードを取っていた。

【次ページ】 残り16秒から5点差を追いつく奇跡を見せた。

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