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野球とサッカーとバスケで合計102。
プロチームがない都道府県はどこ?
posted2017/07/06 08:00
text by
堀井憲一郎Kenichiro Horii
photograph by
Hideki Sugiyama
プロバスケットボールBリーグの初年度は、栃木のチームが優勝した。
リンク栃木ブレックス。
栃木県のプロチームが優勝するのも珍しい。というか、栃木県をホームにしたプロチームそのものが珍しい。
最近のプロスポーツチームは、どこが本拠地であるかを明確にしている。プロサッカーでそれが明確になり、プロバスケットもそれに倣っている。日本各地に本拠地が構えられている。
ただ、本拠地制度はべつだん新しいものではない。
地元を応援しよう、というのは、ずいぶん昔からある。
相撲の番付には、いまでも必ず出身地が書かれている。「茨城 稀勢の里寛」「モンゴル 白鵬翔」「大阪 豪栄道豪太郎」と書かれている。豪栄道は豪太郎って言うんです。
江戸の昔から書かれていた。「陸奥 谷風梶之助」「近江 小野川喜三郎」「信濃 雷電為右衛門」。強い力士は国の自慢でもあった。“わしが国さで見せたいものは、むかしゃ谷風、いま伊達もよう”という俚謡は、谷風の死後もずっと仙台で歌われていた。
地元の力士を応援しようという動きは、天明寛政のころからあった。
ジャイアンツは「東京」と名乗らない。
日本のプロスポーツチームの始まりは野球である。
野球もいちおう、本拠地制度を取っている。ただ、一時期はかなり東京と大阪に集中していた。1952年、フランチャイズ制度が始まったとき、後楽園球場をフランチャイズにしている球団が、読売ジャイアンツ、国鉄スワローズ、毎日オリオンズ、東急フライヤーズ、大映スターズと5球団もあった。東京ではなく、後楽園球場をフランチャイズにしているのが5球団もあったのだ。もちろんホームタウンは東京。
またのちには関西の私鉄4社が、それぞれ阪神タイガース、阪急ブレーブス、南海ホークス、近鉄バファローズと球団を持っていたこともあった(阪神と阪急の本拠地は兵庫県西宮市、南海と近鉄は大阪市)。20世紀は百年をかけて都市に人口を集中させていった時代だったので、そういうことになったのだろう。20世紀の夢が醒めかけたころから、野球チームも全国へと散らばっていった。
いま、日本プロ野球12球団は11の都道府県に散らばっており、重なっているのは東京のスワローズとジャイアンツだけである。スワローズはきちんと東京ヤクルトスワローズであるが、ジャイアンツはそのまま素面で(地域名を冠せず)読売ジャイアンツ、と名乗っている。ジャイアンツの心情としては、日本で職業野球を始めたのはうちであり(そのとおりである)、うちが球界を牽引していったわけであり(だいたいそのとおりだ)、うちが日本を代表している球団であるから、ジャイアンツは日本全体がフランチャイズなのだ、と言いたいのではないだろうか(たぶん)。まあ、気持ちはわからないでもない。だから東京だけ2つ。