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「僕らはね、人類を進化させたい」
西麻布のジムが掲げる異質の野望。 

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村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byHidenobu Murase

posted2017/06/28 08:00

「僕らはね、人類を進化させたい」西麻布のジムが掲げる異質の野望。<Number Web> photograph by Hidenobu Murase

西麻布という町にそびえる「人類を進化させるジム」。案外開放的な外見の裏に、強烈な思想があるとは……。

そんなロマン枠を突破したアスリートは誰か。

 入会資格――ワクワクする選手。

 いわゆるロマン枠ということだろうか。未完の大器。荒れ球の豪球投手、大物打ちのスラッガー。そんな我々が夢とヤキモキを抱かずにいられない選手が、このクラブには溢れている。

 例を挙げるなら、埼玉西武・十亀剣、千葉ロッテ・唐川侑己、藤岡貴裕、西野勇士、日本ハム・横尾俊建、広島・加藤拓也。サッカーでは吉田麻也、武藤嘉紀にチームではジェフ千葉。

 バスケットで田渡凌、女子格闘家のRENA。さらにアマチュア球界でも、今秋のドラフトで注目を集める六大学の怪物スラッガー。そして、あの高校生と、可能性という名のバケモノたちが名を連ねる。

「ただ、一番の基準は人間性ですよ。いくらお金や地位があるからと言って“芸能人や有名人が来ているから”“スポンサーに連れてこられたから”というノリでくる人は、どんな有名な人でも、ご遠慮いただいています。クラブにとって最も重要なことは“良い人が集まる”ことです。良い人が集まる場所には良い流れが生まれ、良い結果が生まれる。それは僕がこれまでの経験で得てきたことです。ただ、うちにきたからには、あらゆる手を講じて絶対によくなってもらいますけどね」

ロッテのエースは、社会人時代からの付き合い。

 その中の1人、今や千葉ロッテ、そして日本代表のエースとなった石川歩投手は、アマチュア時代から診てきた選手だ。

「石川投手は、社会人の時にうちに来ました。当初はあのように細身ですから、身体を大きくしていくことが一番の目的。ただ、目先の結果を求めていきなり身体を大きくするとバランスが崩れてしまうので、数年計画で段階的に体重を増やしていき、徐々に成果をあげてきました。

 彼は非常に探求心が旺盛な選手ですし、求めるレベルも高い。今年は開幕から調子が上がらず二軍落ちも経験しましたが、本人は落ち込むどころか今まで以上に意欲的でした。これまで通用したピッチングが、WBCのオランダ戦では、1番から7番まで全部バレンティンみたいな打線に通じなかったことに危機感を感じていたので、“もうひとつ上のレベルに行くためにはどうすればいいか”ということを多角的に考え、実践してきました」

 ひと口にトレーニングとは言っても、単純に身体を鍛えれば成績が出るわけじゃない。心、身体、食事、人間関係や日常生活の心配事など、あらゆるものがパフォーマンスに影響している。

【次ページ】 アスリートに存在価値を認めさせ続けるために。

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古木克明

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