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村田諒太は試合前でもあわてない。
自分の心と対話するために本を読む。
posted2017/05/19 08:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamagushi
ボクサー村田諒太は、大舞台に強い。
2011年に世界選手権で日本人として初めて決勝戦に進み、翌年のロンドン五輪で金メダルを獲得した。最も層の厚いミドル級で、世界の頂点に立った。
ガードを固め、プレッシャーを掛け、パンチを打ち込む。
打たれてもひるむことなく、なおも前に向かう。
大舞台で実力を、取り組んできたものを、自分を、出し切る。そうやって彼は栄光を掴み取ってきた。ハート、すなわち心の強さが村田諒太のボクシングであり、プロになってからも磨かれてきた。
父親の影響で読み始めた本は、心理学・哲学が多い。
心の強さを引き出しているのが「本」である。
読書家の父親から「本を読め」と口を酸っぱくして言われ、読む習慣がついたという。
「父親の影響はありますね。ただ、高校のときに“読書の時間”があって半分は漫画を読んでましたけど(笑)。本格的に読むようになったのは'06年ぐらいからですかね。心理学、哲学の本が多いという傾向も父親に似ています。
(アマチュアのときは)それほどメンタルが強くなかったんです。海外遠征のたびに何か買って読んではいましたよ。だけど世界選手権で決勝まで行って、五輪で48年ぶりの金メダルを村田が獲ってくれるんじゃないかっていう雰囲気になって、そこでのまれることなく、自分の心をどうコントロールするかってところもありましたから」
雰囲気にのまれることなく、自分の心をコントロールしていく。その作業の一環として、本を使った。心理学の本を読み、自分の心と会話するようにした。
「読んだなかには、『会話を続ける本』というのもありました。友達から“お前はうるさいぐらいだから、逆に静かになる本を読め”って怒られましたけど(笑)。でも何故その本を読むかと言ったら、別に会話を続けたいからじゃない。自分の心を知りたいだけ」