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五輪マラソンの新選考方法は上々だ。
「大人の事情込み」でほぼ最高の形。
posted2017/04/24 08:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
JMPA
東京オリンピックに向けて、マラソンの選考レースの仕組みが変わる。まず、大枠を整理してみよう。
これまでは選考レースが、オリンピック前年の世界選手権をはじめとして4レースあった。3枠しかないのに、4つ。これがスッキリしない選考につながっていた面もある。
2020年のオリンピックに向けては、こんな仕組みになる。
・代表3枠のうち、少なくとも2枠は2019年9月以降に実施する「マラソングランドチャンピオン(MGC)レース」の結果から自動的に選ばれる。
・MGCに参加できるのは、予選にあたるMGCシリーズで条件(順位とタイム)をクリアした選手だけ。
・最後の1枠は、MGCレース後に行われる「ファイナルチャレンジ」(仮称)で最速タイムをマークした選手が自動的に選ばれる(男子では福岡国際や東京、びわ湖毎日マラソンなど既存の大会)
・ただし、ファイナルチャレンジでは、日本陸連が今後に定める派遣設定記録を突破していなければ、代表入りできない。その場合はMGCレースの3番手の選手が選ばれることになる。
大スターだった瀬古を救済するために急遽……。
今回の発表をどう受け止めるべきか。
私は大いに評価する。
これまで、競泳や他の陸上の種目と比べると、マラソンの選考は明確な基準が示しにくく、関係者、マスコミを含めて主観が入り込む余地が多かった。ただし、それが話題の呼び水になっていた面もある。
たとえば、1980年代から1990年代にかけては、マラソンの選考はテレビのワイドショーの恰好のネタだった。
1988年のソウル・オリンピックに向けては、事実上の一発選考レースがその前年の福岡国際マラソンに設定され、あろうことか日本の大スター、瀬古利彦が欠場する事態になった。そのとき、ライバルだった中山竹通が「這ってでも出てこい」と言ったとか言わなかったとか……(どうやら、この言葉は正確ではないらしい)。日本陸連は急遽、救済措置を設定、びわ湖毎日で優勝した瀬古が3番目の枠で選ばれることになった。