ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
どうして鈴木みのるは大物なのか。
異色の経歴と「バルタン星人理論」。
posted2017/01/23 11:30
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
Tadashi Shirasawa
1.4東京ドームの興奮も冷めやらぬ、翌日の1.5後楽園ホール。噂通り、鈴木みのる率いる鈴木軍が、新日本プロレスに再来襲を果たした。
鈴木軍はセミファイナルのCHAOSvs.新日本本隊の10人タッグマッチ終了後に乱入。試合を終えたばかりの両軍の選手たちに一斉に襲い掛かったあと、最後は鈴木みのるがゴッチ式パイルドライバーでIWGP王者オカダ・カズチカをKO。「新日本の宝(チャンピオンベルト)をすべて奪い取る!」と宣言した。
これを受けて、2017年初のビッグマッチである、2.5札幌大会(北海きたえーる)で、王者オカダ・カズチカvs挑戦者・鈴木みのるのIWGPヘビー級選手権試合が決定。このいきなりのビッグカードは、鈴木軍の実力行使という側面だけでなく、新日本が鈴木の実力とバリューを高く評価している証拠とも言えるだろう。
鈴木は現在48歳で、キャリアは実に28年。現在の新日本プロレスは全体的に若返りが進んでおり、エース棚橋弘至ですら40歳を迎えてからシングルのタイトル戦線からは一歩引き始めている中で、これだけの大ベテランが第一線で闘い続けているのは、極めて稀。
なぜ、鈴木だけはトップでいつづけることができるのか。その秘密は、これまでの経歴と、プロレスに対するスタンスにある。
ノア、全日、そして新日と戦場を転々。
鈴木は2003年に総合格闘技からプロレスに復帰後、2000年代半ばはノアを主戦場に、当時のGHC“絶対王者”小橋建太と日本武道館でタイトルマッチを経験。その後、2006年から全日本プロレスに主戦場を移し、全日本の看板タイトルである三冠ヘビー級のベルトを奪取。トップレスラーとしての地位を確立し、“全日本になくてはならない選手”と思われるようになった。ところが2011年、今度は新日本プロレスに本格参戦した。
新日本では、現在まで続く鈴木軍を結成し、2012年の1.4ドームでは棚橋とメインで対戦。2014年の『G1クライマックス』でのAJスタイルズ戦では、アメリカの有名業界誌『レスリング・オブザーバー』で年間最高試合賞に選出されるなど世界的な評価を受けるが、4年間で新日本を後にし、2015年1月からは鈴木軍全員でノアに進撃。GHCヘビー級を始めとしたノアのベルトを鈴木軍で総なめにして、2年後の今回、新日本に再上陸をはたした。