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新日本プロレス1.4ドーム後の世界。
鈴木軍リターンズ。王者オカダの明暗。
posted2017/01/06 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
1.4東京ドームの余韻は、まだ十分に残っていた。
メインのオカダ・カズチカとケニー・オメガの試合のインパクトはすごいものだった。
1月5日、後楽園ホール。オカダの体には大きなテーピングが施されていたが、その下には激闘の代償として、多くの傷跡が残っていた。背中は大きく切れて、首筋にはオメガのドロップキックによって受けたであろう衝撃が濃いアザになっている。
「新日本プロレスを背負っていく」と宣言したオカダの決意が、1.4のオメガとの46分45秒にはあった。シングル初対決は、2万6千人の観衆を満足させた。うなりのような驚きの声を何度も聞いた。単なる称賛だけではない観客の反応にはオカダ自身、大きな手ごたえを感じていた。
オカダの13年間のプロレス人生で最も長くて過酷な試合――。
「死ぬかと思った」
そこには2人の男の勇気と強さ、それに伴う激闘の説得力が、観客の想像を超えて存在していた。
もし、また2人がリングで遭遇することがあっても、この衝撃を越えることは難しいかもしれない……そう思ってしまう、それくらいのベストバウトだった。年の初めだが、年間最高試合はもう決まったようなものだった。
「悔しいからです。反撃ののろしです」
同日、新日本プロレスは大会場での年間スケジュールを発表した。
8月の両国国技館3連戦を含むG1クライマックス前、7月1日と2日に米国ロサンゼルスのロングビーチ・コンベンションセンターで2連戦「G1スペシャル」と題した興行を打つ。
当初はロサンゼルスでのG1クライマックスの開幕戦もプランニングされていたようだが、G1とは少し切り離した形での米国“殴り込み”となった。
「悔しいからです。反撃ののろしです。攻められっぱなしでは、悔しいじゃないですか」と木谷高明オーナーは米国進出の動機を語った。
昨年、中邑真輔やAJスタイルズらを引き抜かれた遺恨を形に変えるということだ。「逆黒船」的な発想で、新日本プロレスの世界進出が始まる。
その世界戦略の主役はもちろんIWGP王者オカダである。