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ロシアで組織ぐるみで1000人以上。
新たなドーピング報告書の衝撃。 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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posted2016/12/25 08:00

ロシアで組織ぐるみで1000人以上。新たなドーピング報告書の衝撃。<Number Web> photograph by AFLO

ドーピングの調査を担当したマクラーレン弁護士。ロシアで薬物使用が恒常化していたことを指摘するなど、踏み込んだ内容になった。

日本の選手たちも、SNSなどで不満を露わに。

 報告書の発表された週末にはスキーの距離W杯がスイスのダボスで行われ、30kmでは報告書にドーピング使用で名前の挙がっているアレクサンドル・レグコフが5位、またショートスプリントではセルゲイ・ウスチュゴフが優勝したが、ソチ五輪のノルディックスキー日本代表の選手たちは、それにいち早く反応した。

 レンティング陽(アキラ)は「マクラーレンレポート第2弾によってほぼ決定的になったロシアのソチでのドーピング。なのにまだ選手はワールドカップに今日も出ている。FIS(国際スキー連盟)やWADA(世界反ドーピング機関)は早く対応してクリーンなアスリート守ってほしい」とツイッターで心情を吐露。

 それを受けて、ショートスプリントに出場した宮沢大志(JR東日本)も「ロシア勢の傲慢な態度や連盟の対応を見てると腹が立ちます。報告書に載っていた選手が今回も圧倒的な強さを見せて優勝しました。ドーピングを平気でする国なので、そもそもの感覚が僕らと違うというのは感じます。同時に出場を許している主催者にも疑問を感じます」と疑惑の解明を訴える。

抜き打ち検査数が、絶対的に足りていない。

 ノルディックスキーをはじめ、冬季競技の多くはW杯での順位などで五輪や世界選手権への出場が決まる。順位が1つ違うだけで、出場権の有無、またスポンサーの獲得などにも大きく影響してくる。

 レンティングは「僕も今回31位などギリギリの順位を取っているので、もし後からドーピングで上位の人がつかまっても世界選手権には出場できません。できるだけ現役の選手から徹底的に検査してほしい」と切実に訴える。

 マクラーレン報告書を受けて、国際スキー連盟は各年度のドーピング検査数を発表しているがその数は充分とは言えない。2015年度の大会外の尿検査数はクロスカントリースキーで239件、血液検査数は186件だが、ダボスW杯にエントリーした延べ人数307人を見ても、大会外の抜き打ち検査数が絶対的に少ないことがわかる。ロシアのドーピング問題うんぬんの前に、まず正しい検査を実施する必要があるだろう。

【次ページ】 結局ロシアはリオ五輪で金19個、メダル56個だった。

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