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戦友たちの30年越しの告白に感謝を。
清原和博からの1本の電話。 

text by

鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKatsuro Okazawa

posted2016/12/21 12:20

戦友たちの30年越しの告白に感謝を。清原和博からの1本の電話。<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa

1985年、夏前にPL球場で撮影された1枚の写真。清原和博を思い出す時、この頃の姿を思い出すという人は決して少なくないはずだ。

電話の声は、甲子園について、野球について語った。

 新幹線は街の灯りを追い越しながら走っていた。デッキには列車が風を切る「ゴォォォ……」という音が響いていた。電話の声は10分以上にわたって語った。甲子園の記憶、野球と今の自分への思い。そして最後にこう言った。

「謝罪ができないまま、ズルズルときてしまいました。何とか早く、皆さんに謝罪したいと思っています。今は精神的にも、肉体的にも、誰かに会える状態ではありませんが、1日も早く、更生して戻りますから。待っていて下さい……」

 私は電話が切れた後も、そのまましばらくデッキに立ち、外を見つめていた。社会と遮断された暗闇の中から、戦友たちへの感謝を届けたい一心でかけた1本の電話。そこに清原の「体温」を感じた。他人の記憶だけを頼りに結んだ線は、私の中ではっきりと輪郭を帯びた。清原和博へ向けた30年越しの告白は、確かに1人の打者の像を描き出している。そう思えた瞬間だった。

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『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』

PL学園時代の清原和博が甲子園で放った通算13本塁打は、今後破られることがない不滅の記録だろう。この13本は、ただの記録として残っているわけではない。甲子園の怪物に出会い、打たれた球児たちは、あの瞬間の”記憶”とともに、その後の歳月を歩んできた――。

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清原和博

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