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清宮が5三振でも勝つ早実の精神。
スポ根な努力より、自由こそが強さ。

posted2016/11/04 17:00

 
5打数5三振でも劇的なサヨナラ勝ちで優勝。主将・清宮は厳しいマークを受けてもチームメートたちが奮起した。

5打数5三振でも劇的なサヨナラ勝ちで優勝。主将・清宮は厳しいマークを受けてもチームメートたちが奮起した。

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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Naoya Sanuki

 信じられない――。

 早実の戦いぶりを見ていると、毎度のことながら、何度も何度も、この言葉を発することになる。

 この秋の東京大会もそうだった。新チーム結成時の投手陣の頼りなさを思うと、上まで勝ち進む姿をまったく想像できなかった。

 しかし、準々決勝で優勝候補の関東一高に8-4と快勝してから、チームが激変した。準決勝も国士舘を9-0の7回コールドで一蹴。3日の決勝では豪打の日大三高を相手に9回裏、2点差を跳ね返して8-6でサヨナラ勝ち。来春の選抜大会出場をほぼ当確とした。

 これまでは「早実は清宮しかいない」と言われ続けていたが、準々決勝以降の清宮は大スランプに陥り、3試合でわずか1安打。決勝にいたっては5打席連続三振と散々だった。にもかかわらず、早実は8試合を勝ち抜き、275校が加盟する東京の頂点に上り詰めたのだ。

 早実はいったん成長サイクルに入ると、1試合ごと、まるで別チームのように生まれ変わっていく。この秋も準々決勝以降は、そうだった。

“努力を肯定しない”和泉監督の戦略だったのでは?

 それを周囲は、つい「ミラクル」と呼びたくなるのだが、こう何度も信じられないような勝ち上がり方を見せつけられていると「奇跡」ではなく、和泉実監督の戦略なのではないかと思えてくる。

 誤解を恐れずに言えば、和泉は努力を肯定しない監督である。

 この夏、早実は大阪桐蔭と練習試合を組んだのだが、西谷浩一監督はこう驚いていた。

「和泉さんが『うちの選手は集中力が続かないから1試合でいいです』って言うんだよね。普通、お金かけて遠征まできたら、2試合やらせて下さいって言うよ。早実はやっぱり何か違うなって思いましたね」

【次ページ】 「努力」に付着しやすい「自己陶酔」を否定する。

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