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チェルシーの青をイタリアの青に。
コンテ新監督は労働と堅守を求める。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2016/07/21 11:20

チェルシーの青をイタリアの青に。コンテ新監督は労働と堅守を求める。<Number Web> photograph by AFLO

堅守速攻でタイトルを獲得したモウリーニョとも決別したチェルシーの業は深い。コンテ流はこの地でも成功するか。

ユベントスでの成功は、負けない守備から始まった。

 チームとしての戦い方には、「アズーリ」ことイタリア代表の「青」が見られると思われる。今夏の欧州選手権でも見られた、戦術意識の行き届いた堅守色という意味だ。主眼は相手より多く得点を奪うことではなく、失点を相手よりも少なくすることに置かれる。

 就任1年目の現実目標は、CL復帰を意味するトップ4返り咲き。従来のトップ4争い常連に加えて、昨季の優勝争いを演じたレスターとトッテナムや、スラベン・ビリッチ監督の下で右肩上がりのウェストハムらもいる状況では、決して楽な目標ではない。

 着実にポイントを重ねるためには、爆発的ではなくとも安定したパフォーマンスが不可欠だ。2年連続7位だったユベントスをセリエA3連覇へ導いたのも、負けない戦い方を可能にする集団としてのハードワークで、1年目の無敗優勝がきっかけだった。リーグ戦38試合での23勝よりも、15引分けが物を言った。

カンテは獲得した。あとはFWとCBが優先事項。

 チェルシーでの会見で採用の意向を問われた3バックも、「コンテ色」の一部ではある。だが、その質問に当人が苦笑していたように、3バックに固執する監督ではない。むしろ、システムの選択に関しては持ち駒の特性に合わせることのできるカメレオン的な監督だ。

 現時点でのチェルシーに3バック向きのCBが揃っているとは言い難い。スピードのあるクルト・ズマは、プレシーズンには参加しているが、今年2月に負った膝の怪我から復帰中。足下が確かで判断力にも長けたCBとなると、12月で36歳のジョン・テリーしかいない。

 当面は、チームとして戦い慣れている4-2-3-1か4-3-3で、ポイント奪取を意識しながら様子を見る可能性が高い。昨季レスターのカウンター殺法を中盤の底で支えたエンゴロ・カンテの獲得により、クラブが放出を拒んでいるネマニャ・マティッチを引き留められれば、中盤の盾を強化しつつ、セスク・ファブレガスをトップ下、あいは背後にカンテとマティッチがいる形の3センターで、より攻撃的に使うこともできる。

 新戦力としては、マルセイユからベルギー代表FWのミシ・バチュアイが早々に獲得されている。しかし、本人の意思が微妙なジエゴ・コスタが残留するかも不明で、前線には候補とされるアルバロ・モラタ(R・マドリー)のような即戦力を更に加える必要がある。新CB獲得も優先事項。高さと速さを備えたカリドゥ・クリバリーが有力候補だ(執筆時点)。

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アントニオ・コンテ
チェルシー

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