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ドーピング、国際陸連はお咎めなし。
暴走ロシアを放置、隠蔽した責任は?
posted2016/07/07 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
AFLO
「ロシアチームのリオ五輪への出場を認めない」
国際陸連は6月17日の理事会でロシアの反ドーピング機関が国際陸連が定める基準を満たしていないとし、リオ五輪の出場資格停止処分を解除しない方針を発表した。しかし「国外拠点で活動し、潔白を証明できる選手には『チームではなく、個人での参加』を例外的に出場を認める」という救済措置も発表。リオ五輪出場へ一縷の望みを持った80選手以上がその救済措置に申請している。
ロシアの組織的なドーピングについて内部告発をした女子中距離のユーリア・ステパノワは早々と救済措置が取られることになったが、7月6日から開催されている陸上のヨーロッパ選手権を前に、彼女以外に10選手が救済されるという一報が届いた。彼らはおそらくリオ五輪にも出場可能とみられる。
ドーピング検査は自主的にするものではない。
この救済措置に関しても「本当にクリーンな選手を救済する意図なのか」と疑問の声が上がっている。というのも、ドーピング検査は自ら申請して行うものではなく、各国の反ドーピング機関や大会主催者によって対象選手が決定されるため、自ら手を挙げて検査してもらうことができないからだ。
実際、ロシア選手の中でも、今年に入ってからの検査回数が1回の選手と6回の選手がいるなどばらつきがあり、検査回数の少ない選手は証拠不十分とみなされる可能性がある。本当にクリーンな選手を救済するための方法というよりも、他国を拠点に活動している選手のさらなる内部告発を期待している可能性もある。
棒高跳びのエレーナ・イシンバエワは「罪のない選手にまで連帯責任を求めて、五輪への出場を認めないのは人権侵害」とスポーツ仲裁裁判所へ訴えており、裁定は7月21日に下される。