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桐生祥秀、山縣亮太、ケンブリッジ飛鳥。
決勝の土曜日、日本人初の9秒台狙う!
posted2016/06/24 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
ついに、壁を突破する日が来たのかもしれない。
少なくとも、最も壁に近づいたのは間違いないだろう。
今日6月24日から26日まで行なわれる日本選手権。その真ん中の日程である25日、100m決勝へ、再び、期待はふくらむ。
日本陸上界にとって、100mで9秒台を出す選手の出現は、長年の夢だった。今から18年前、伊東浩司が現在も日本記録の10秒00をマーク。そのときから、9秒台への突入は、夢ではなく、現実に目指すべき目標へと変わった。
だが、それはかなわずに、今日まで来た。
数々のスプリンターが挑戦して、達成することはできなかった。
壁の突破へ近づいた瞬間はある。
最近で言えば、2013年、高校3年生の桐生祥秀が日本歴代2位の10秒01を出したとき。2015年、同じく桐生が、追い風参考ながら9秒87を記録したとき。その両方で、9秒台が現実となるまで間もないと思われた。それは現実とはならずに今日まで来た。だが、「今度こそ」と注目が集まっている。
その理由の1つは、有力選手が好調、ということだ。
スタートを改善し、さらに進化していた桐生。
筆頭は、先に記した活躍をはじめ、近年、日本短距離界の中心にいる桐生にほかならない。
3年前の10秒01以降、常に期待を集め続け、ときに故障に苦しんだこともあったが、今シーズンは一段成長した姿を見せている。
大きく変えたのはスタートだ。今春のアメリカ遠征の際、最初の3歩で大きく出る形を取り入れた。5月のゴールデングランプリ川崎ではそのスタートで失敗したものの、その後の大会では成果が出ている。
6月11日の日本学生個人選手権の準決勝では、10秒01(追い風1.8m)を3年ぶりにマーク。スタートに加え、中盤以降のフォームの改善の効果が現れた。何よりもインパクトを与えたのは、10秒004という数字が公になったことだった。