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“耐死仕様”の破天荒なプロレス!
帰ってきた飯伏幸太の物語は続く。 

text by

井上崇宏

井上崇宏Takahiro Inoue

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photograph byEssei Hara

posted2016/04/08 18:20

“耐死仕様”の破天荒なプロレス!帰ってきた飯伏幸太の物語は続く。<Number Web> photograph by Essei Hara

飯伏復帰戦のDDT両国大会。「東西正面向正面全面使用エニウェアフォール・ウェポントレジャーハント3WAYタッグマッチ」という特殊な試合形式だった。

飯伏に新技を開発してもらいにくるレスラー達。

 たまにほかのプロレスラーがやってくることもある。

 それは飯伏と一緒に練習をするのが目的ではなく、たとえばタイトルマッチ前などに飯伏に一緒に新しい技を開発してもらうためだったりする。

 だから、いつもこっそりやってくる。

 まったくファイトスタイルが異なる選手に対しても、飯伏はその選手の適性に合った新技を考えてくれる。じつは飯伏にとってそれは容易な作業だった。なぜなら常にプロレスのイメージトレーニングをしながら生活をしているから、アイディアのストックは腐るほどあるからだ。そして彼らは「助かった。ありがとう」と言って帰って行く。

 どんなスタイルでも飯伏に任せればいい。

 そうすれば新・必殺技を考えてくれるから――。

飯伏の考えに、すでに気づいていた高木。

 昨年11月から頸椎椎間板ヘルニアのため長期欠場をしていた飯伏は、当時、DDTと新日本の2団体所属という前例のない形態に精神的にもかなり変調をきたしていた。

 2月9日、高木からの呼びかけで2人は話し合いの場を持った。

 高木は飯伏のことを誰よりも知り尽くしているから、本人が退団という選択をしようとしていることに前から薄々と気づいていた。だから案の定、飯伏から「退団したい」という言葉が口をついた時、「わかったよ。そうだよね」とだけ答えた。

「飯伏プロレス研究所で好きなことをやって、もっともっとこのプロレス界をおもしろくしてくれ」

「本当にありがとうございました。これからもっともっとプロレス界をおもしろくして、またDDTに帰ってきたいと思います。今までありがとうございました。でも、これからもよろしくお願いします」

 袂を分かつ形にはなったが、飯伏幸太と高木三四郎は精神的にずっと繋がっている。

 その心の絆こそが、飯伏にとっての“デス・プルーフ”(耐死仕様)となっていることを飯伏本人も知っている――。

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