「ああいう勝ち方もあるんだな」

　ショットやパットの出来栄えに対する松山自身の自己評価は、優勝を決めた直後でも、やっぱり最高ではなかった。最終日の優勝争いの中でこそ、「ほぼ完璧」と言えるショットがようやくいくつか得られたものの、76ホール目のバーディーパットをヒョロッと外したことには苦笑気味。「最後はなんだあれって感じで、終わり方が良くなかったんで、負けた人みたいな感じがある」と語ったほどだ。

　1つ1つのパーツに目をやれば、最高の技ではなかった。けれど、すべてが最高に出揃うことは、そうそう起こるものじゃなし。それが現実である以上、たとえ最高ではなくても、今あるパーツを寄せ集め、組み立て、最大限に生かして最善を尽くす。それが、弱肉強食の厳しい世界を生き抜き、百獣の王たらんとするための最高の戦い方。

「ああいう勝ち方もあるんだな」

　持てる武器をすべて使い切り、最善を尽くして掴み取った勝利。

　開き直った松山英樹は、だからこそ、強かった。