マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
野球部の「上下関係」が現在変化中。
命令と服従ではなく、敬意こそが絆。
posted2016/01/12 10:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Miki Fukano
お正月の2日、3日は、大学駅伝のテレビ中継の“絶叫”が目覚まし時計代わりとなる。
朝の7時から、ランナーたちの激走を伝えるアナウンサーの爆声が家じゅうに響き渡るから、なんだなんだと起き出して、おお今年もやってるか……と、なんとなく見入ってしまう。
今年は青山学院大が2連覇を遂げた。
2日目、東京・大手町のゴール付近。
おそろいの青緑のウインドブレーカーを身につけた部員たちが横に広がり、肩を組んでアンカー・渡辺利典選手のゴールインを今か今かと待ち構えている。
笑顔でアンカー到着を待ち望む選手たちの顔、顔、顔。
やりきった満足感、出しきった爽快感。
日本の若者たちがみんなこんな顔をして生きていたら、どんなにたのもしいだろうね。そんなことをボンヤリ思いながら、ふっと気づいたことがある。
4年生って、誰なんだろう?
上級生が見た目から分からない、という現象。
学生野球の4年生たちの“現役”は、ほとんどが秋のリーグ戦を最後に終わってしまうのだが、大学駅伝の4年生たちは年が明けても現役が続き、むしろお正月こそが本番である。
学窓巣立つ間際、万感こもるはずの最後の大舞台での彼らの表情は? と画面の中を探してみるが、姿を見ただけじゃ、その4年生がわからない。
みんなが同じように笑い、同じように伸びやかで、同じように屈託がない。
そういえば……。
思い出したことがある。昨年、取材で訪れたいくつもの高校、大学の野球の現場でのこと。
そこでも、パッと見ただけでは“上級生”がわからなかった。
いずれも、長い伝統を引き継ぐ由緒正しき「名門校」。なのに、予想していたピリピリ感がグラウンドに薄い。
選手みんなが、同じようなノビノビ感と、ほどよい緊張感の中で同じように練習の準備を行い、練習に臨む。
野球部も変わったなぁ……。