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世界選手権のメダル数が増えている。
体操筆頭に五輪競技が躍進のわけは? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKyodo News

posted2015/11/16 10:30

世界選手権のメダル数が増えている。体操筆頭に五輪競技が躍進のわけは?<Number Web> photograph by Kyodo News

ロンドンでの日本史上初の五輪団体銀メダルに続き、日本人として40年ぶりの世界選手権金メダルを獲得した太田雄貴。

体操、シンクロ、フェンシングでの躍進。

 世界選手権では、五輪では実施しない種目も行なわれており、その成績も加えているため、単純にオリンピックの成績が同じようになるかは分からない。ただ2015年は、全体として、世界一を争える種目=選手が多くなったことが見てとれる。そして2007年を起点とするなら、2011年、2015年と、競技力は向上しているといえる。

 数字の面を押さえた上で、中身を見ても、2015年は明るいニュースが多かったのではないか。体操での、悲願としてきた男子団体金メダルもその1つだ。

 また「復権」、「快挙」もあった。

 復権の筆頭はシンクロナイズドスイミングだ。2011年、そして2013年の世界選手権ではメダルなしに終わっているが、今年は銅メダルを4つ獲得。久しぶりに歓喜に湧いた。その原動力となったのは井村雅代氏のコーチ復帰にほかならない。

 快挙にあたるのは、なんといってもフェンシングで太田雄貴が手にした金メダルだ。欧米の厚い壁を考えれば、日本史上初となる世界一は、快挙と呼ぶにふさわしい。

東京五輪が強化のサイクルを回し始めた。

 好成績の背景の1つには、2020年の東京五輪がある。

 例えば、シンクロナイズドスイミングの場合、リオデジャネイロ五輪でも低迷するようなら2020年に期待することが難しいという理由もあり、井村氏の復帰で再建を図った。自国開催大会での活躍のために、各競技で懸命の強化が始まっている。その成果が少しずつ見られたのが、今年の世界選手権だ。

 卓球、バドミントンのように、協会が先導役となっての長期的なプロジェクトが徐々に形になり始めているケースもある。卓球は'80年代から小学生の年代の選手の育成に着手し、2000年代に入ると小学生のナショナルチームを結成している。バドミントンもまた、若い世代を積極的に育てる試みを行なってきた。男子シングルスで3位となり、同種目で日本初のメダルをもたらした桃田賢斗などはそのシステムあっての台頭と言ってもさしつかえない。

 このように見てくれば、2015年の好成績は、リオデジャネイロ五輪へ向けての明るい材料である。

 ただし、オリンピックは別物という言葉もある。例えば2012年のロンドン五輪で、柔道女子で本命と言われた選手たちが敗れたように、実力がそのまま成績に結びつくとも限らない。

 そうした落とし穴がないわけではないが、少なくとも現段階では、好材料が見えたプレオリンピックイヤーであったのは、間違いなさそうだ。

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