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セリエと食の切っても切れない関係。
サッカーはソウルフードで強くなる?
posted2015/10/08 10:40
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
60gのトマトソース・パスタ。それにカプレーゼか野菜のグリルを加えた2皿が、FWトッティ(ローマ)お気に入りの節制メニューだ。
ミランでの現役時代に、禁欲的な食事制限で知られたFWインザーギも、オリーブオイルをかけただけのパスタに、ブレザオラ(脂肪分のないロンバルディア産塩漬け牛肉)のルーティンを滅多に崩さなかった。一度、メカジキのグリルを頼んだら、ミラネッロ練習場の厨房が「天変地異だ」と驚いてひっくり返ったらしい。
美食の国イタリアでは、各クラブにお抱えシェフがいることも珍しくない。イタリア人の食へのこだわりは、“我らの料理こそ世界最高”という強烈な自負からきている。それはまるで、4度のW杯優勝を誇るイタリアン・カルチョの栄光のように揺るがない。
数年前、筆者がフィレンツェ郊外コベルチャーノにあるイタリア代表のナショナル・トレセンを取材したときに、昼食をご馳走になった。
W杯やEUROでアズーリに帯同するシェフに作ってもらったのは、トマトソースのペンネに牛肉とパプリカの炭火焼きグリル。ジュウジュウと音立てた熱々の赤身肉を頬張りながら、シェフに異国での食材調達の苦労話などを聞いた。厨房で働く全員の「自分たちもドイツW杯で優勝した世界王者の一員」という、誇らしげな笑顔を覚えている。付け合せのポテトの旨さも覚えている。
リッピは広州恒大にもイタリア食を持ち込んだ。
イタリア・サッカー界でイタリア料理が語られるときは、その美味しさもさることながら、穀物や肉・魚類、野菜・果物、乳製品など多品目の食品をバランスよく摂る「メディテラネア(地中海)式ダイエット」の効能とセットで語られることが多い。
ドイツ大会と南アフリカ大会で2度アズーリを率いた名将リッピは、'12年から3年指揮を執った広州恒大時代、チームの食事にイタリア流のパスタ料理や間食用のジャム付きタルトを加えさせた。愛国主義者的性格のリッピは、「中国人の選手たちにも好評だった。イタリア流食生活の効果は普遍なのだ」と強調した。