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選手会が高騰する移籍金制度にNO!
「外側」で利益を手にする者とは? 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2015/10/03 10:30

選手会が高騰する移籍金制度にNO!「外側」で利益を手にする者とは?<Number Web> photograph by Getty Images

モナコから来たアントニー・マルシャルはもちろん有望な選手だが、69億円という移籍金には驚きの声があがっている。

2014年に代理人が得た合計額は280億円に。

 では、このシステムから利益を得ているのは誰なのか。FIFproのフランス人会長フィリップ・ピアによると、「数少ないメジャークラブ、代理人、第三者オーナー(投資ファンドなど)」である。FIFA独自の調査が示すのは、2014年の選手移籍で移籍を仲介するエージェントが得た収入は、全体で1億5500万ポンド(約280億円)にも上るという驚愕の事実だ。

「ある代理人が2000万ユーロを手にするという理由だけで、移籍が決まってしまうような状況には、我々が敢然と立ち向かわなければならない」とオランダ人のファンセヘレン事務局長は話す。

「だからこそ、仲介料を制限する必要がある。この移籍システムで私利を貪る業者は増えているが、他方で何カ月も給料が払われない選手もたくさんいる。これはいかなる労働者についても守られるべき基本的な権利だが、サッカー界では頻繁にないがしろにされている」

現実的な着地点と、理想のゴールは?

 とはいえ、欧州委員会の競争担当委員が決断を下すまでには半年から1年かかり、FIFProが勝ったとしても、新たなルールの制定にはさらに1、2年を要するとみられている。そもそも、これまで当たり前のように存在した移籍金をなくすことは本当に可能なのだろうか。

「おそらく完全に撤廃されることはないが、いくつかの細則は改定されるのではないか」と国際スポーツ記者協会・サッカー部門のチェアマンを務めるベテラン記者のケア・ラドネッジは話す。

「ただし、粘り強い交渉が必要になる」

 現実的な決着点は、契約に互いが破棄できない保証期間を設ける案などだが、サッカー界の未来を考えれば、移籍金は完全に廃止されるべきだとFIFProは主張する。そうなったとしても、ビッグクラブの不都合にはならないし、サッカー界の外で動く巨額のカネの流れを止め、ひいてはこの世界に安定と持続性をもたらすことにつながる、と。

【次ページ】 「外側」に利益を吸い上げられる構造に終止符を。

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