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“謎のチーム”サッカー北朝鮮代表。
その正体を東アジア杯で追いかける。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/08/11 12:40

“謎のチーム”サッカー北朝鮮代表。その正体を東アジア杯で追いかける。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

東アジアカップでの日本代表との初戦。ゴールを決めて喜ぶ北朝鮮の選手たち。先制していた日本だが、試合後半、北朝鮮の粘りで競り負けた。

世界のサッカーシーンを熟知する北朝鮮。

 1990年代後半に一時国際大会に出場しなかった時期があるが、2000年頃から復帰を果たした。多くの韓国紙が伝える内容では「選手たちは世界のサッカーの主要情報に触れている」。世界の情報から大きく遠のいているということはないのだ。

 古い話になるが、2002年秋にソウルで行われた南北親善サッカーの際、北の選手に「韓国で気になる選手は?」と聞いてみたことがある。「ドイツに行ってる攻撃の選手」と口にしていた。'02年ワールドカップ前にブンデスリーガのブレーメンにレンタル移籍していたイ・ドングのことだった。確かに当時も「情報がないわけではない」と感じたものだ。

 また韓国メディアでは、近年の北朝鮮国内リーグの様子が幾度か報じられている。

 国内リーグ「最上級国内連盟戦」は1部から3部まで構成され、1部に15チーム、2部は(おそらくは複数リーグに分かれ)40チーム、3部は同様に135チームが所属する。

 2011年の時点で、1部15チームのうち8チームが平壌をホームにするチームだった。また、トップクラブの多くは軍の傘下にある。2大クラブ「平壌4.25」は朝鮮人民軍の人民武力部の傘下で、北西部の名門「鴨緑江」は人民保安部に属する。選手はプロではないものの、軍人などとして身分を保障された状況下でプレーを続けている。

 ちなみに「連盟戦=リーグ」などのように、北朝鮮ではサッカー用語(外来語)を漢字語に変換したものが使われてきた。「パス=連絡」、「PK=11メートル罰則蹴り」、「オフサイド=攻撃違反」、「ワールドカップ=世界蹴球選手権」といったように。最近は実際には徐々に外国語をそのまま用いることが多くなってきたようだ。筆者自身、2011年に年配の監督が「世界蹴球選手権」と口にしているのを聞いたことがある。いっぽう、今大会で男子代表の選手がはっきりと「ワールドカップ」と言っていた。

東アジアカップの“謎のチーム”。

 そんな北朝鮮代表を、今大会の第2節以降取材してみた。

 “謎のチーム”というイメージは、現場にいても強いものだった。

 大会期間中、男女の代表ともに大会組織委員会が発表した練習時間のキャンセルを繰り返した。

 なんとか話題を拾おうとする韓国記者団も大会終盤には練習場に向かうこと自体を諦めてしまった。

 試合後の取材エリアも素通り。声をかけても「(インタビューは)やりません」と口にする程度だ。大会第2節、5日に行われた男子の中国vs.北朝鮮戦の後に韓国記者のひとりがようやく「パク・ヒョニルの身長だけを聞き出せた」と疲れた表情を見せていた。大会初戦に日本男子代表相手に活躍を見せた「背番号20」のことだ。194センチだそうだ。

 とはいえ、男子と女子では多少チームの雰囲気が違った。

 大会最終日、韓国戦後の記者会見での男子チームのキム・チャンボク監督の表情はあくまで穏やかだった。記者会見という定めれられた場所ではしっかりと取材に応じた。

 男子代表は今年1月のアジアカップ(オーストラリア)でウズベキスタン、サウジアラビア、中国に計7失点(2ゴール)の惨敗を喫し、監督が交代した。キム監督就任後のロシアワールドカップ2次予選ではイエメン、ウズベキスタンに2連勝を挙げ、グループHの首位を走る。アジアカップの惨敗を受け、今大会のためにもしっかり準備をしてきたというこのチームは、すべてのゲームで主力を起用し、一定の成果を出した。

【次ページ】 「韓国に勝てず、残念だ」と微笑む。

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#キム・チャンボク

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