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イチローvs.マー君“初対決”。2人が交わした13球の会話。
~18.44mに生まれたリスペクト~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byAFLO

posted2015/07/06 10:30

田中はイチローと対戦した全4打席において、初球はすべて違う球種を選んで勝負を挑んだ。

田中はイチローと対戦した全4打席において、初球はすべて違う球種を選んで勝負を挑んだ。

 18.44mの距離を隔てつつ、2人は「会話」を交わしていた。6月15日。フロリダ州マイアミで行われた「マーリンズ-ヤンキース」の交流戦で、イチローと田中将大の初対決が実現した。「2番センター」で先発したイチローが、第1打席に時速150kmの速球をライト前へ運べば、第3打席には田中がこの試合の最速153kmの速球で見逃し三振に仕留めてやり返す。終わってみれば、4打数2安打とイチローの貫禄勝ち。試合後、田中が「やっぱり意識しました。完敗です」と敬意を払えば、イチローも「駆け引きが必ずあるから、毎回対戦がおもしろいタイプの投手」と、あらためて田中の高い力量を認めた。

 対戦結果以上に、13球の攻防は、2人にとって貴重かつ有意義な空間だった。ともにヤンキースの一員としてプレーした'14年のシーズンは、常に視界に入る位置にいた一方で、互いに一定の距離感を保っていた。大先輩のイチローへの遠慮があった田中に対し、高額の条件で移籍し、日米両国から注目を集める15歳下の後輩をイチローも気遣っていた。野手と先発投手とあって、練習メニューやルーティンも違う。クラブハウス内でも、2人のロッカーは反対側。ちょうどマウンドと打席間ほどの距離だった。

「距離が離れると、気持ちが近くなる」(イチロー)

 だが、今回、敵として同じ土俵に立ち、真剣勝負を繰り広げたことで空気が変わった。対戦した翌日、試合前の練習中には、田中がイチローの元へあいさつに訪れ、数分間、談笑した。終始、笑みを浮かべていたイチローは、昨季までとの変化を、微笑ましく、表現した。

「チームメートとしてコミュニケーションを取ったことはほとんどなかったんですが、初めて会話になったという感じ。(距離が)離れると、気持ちが近くなる。そういうことかな」

 リーグが違うこともあり、今季中に2人が公式戦で再戦することはない。だからこそ、イチローにすれば、気持ちを込めて速球勝負を挑んできた田中の姿勢が気持ち良かった。

「必ず試合を作る。十分、エースになれるピッチャーですよ」

 互いの息遣いが聞こえてきそうな、濃密な13球の会話。主に代打での出場が続くイチローにとっても、大いに刺激となったに違いない。

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