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天敵・ブラッター辞任でお祭り騒ぎ。
イングランドよ、“正気”を取り戻せ。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/06/16 10:40

天敵・ブラッター辞任でお祭り騒ぎ。イングランドよ、“正気”を取り戻せ。<Number Web> photograph by Getty Images

「抜本的な改革が必要だ」との声明を残し、辞任を発表したブラッター。後任にはジーコ元日本代表監督はじめ、複数の名前が挙がっている。

ブラッター再選時には、国内のメディアがこぞって攻撃。

 それだけに、スイスの司法当局によるFIFA幹部逮捕劇の最中だったにもかかわらず会長再選が決まった5月末のイングランドには、ブラッターとの直接対決に敗れたかのようなムードと不満が漂っていた。

 デイビッド・キャメロン英国首相が「甚だ遺憾」とコメントすれば、ウィリアム王子もFA名誉総裁として観戦に訪れたFAカップ決勝の席で、「フェアプレーの精神とはほど遠い」FIFAの実態に「改善」を求めずにはいられなかった。

 前述の『サンデー・タイムズ』紙は、第1面でブラッター続投を伝えただけではなく、『X-ファイル』ならぬ『FIFAファイル』 の見出しで汚職疑惑報道に6ページを割く力の入れ具合。同じ高級紙の1つである『テレグラフ』紙も、「ブラッターを追い出す方法」として「更なるFBI捜査」、「主要国のW杯ボイコット」、「スポンサーの契約解除」などによるFIFAへのプレッシャーを挙げて弾劾の手を緩めない構えを見せていた。

度が過ぎる攻撃は、自身の正当性を揺るがせる。

 そして実際、ほどなくしてブラッターは辞意表明に追い込まれた。南ア大会絡みの賄賂1000万ドル(約12億5000万円)への関与を暴かれる危険性を察知して身を引く覚悟を決めたとされるが、FAのダイク会長は「2、3カ月中には逮捕に発展するだろう」と『ガーディアン』紙のインタビューで予言した。

 時を同じくしてFBIが'18年ロシア大会と'22年カタール大会の開催地決定投票に関しても賄賂の有無を捜査する意向を明らかにしたことから、開催まで時間的余裕のあるカタール大会に関しては「再投票が妥当」ともダイク会長は口にしている。国内では、ロンドン市長や文化大臣から、'22年のイングランド開催を「妥当」とする発言まで飛び出した。

 だが冷静な目で眺めれば、対ブラッターの「戦勝」気分もほどほどにしておくべきだろう。単なる会長交代ではなくFIFAの抜本改革こそが重要であることはダイク自身も強調している通りで、そのためには逆効果になりかねない発言がFA会長や政治家など国内の責任ある立場の者にも目立つ。組織の腐敗を元から絶つには209にのぼる国と地域の意思統一が不可欠となるが、下手をすればFIFA内の分裂に拍車をかけかねない。

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