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香川とドルトムントの“ジレンマ”。
「縦の速さ」への固執が精度を奪う。
posted2014/12/05 11:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
11月30日、ドルトムントがついに単独で最下位に沈んだ。
13試合を終えて勝ち点が11に留まったのは、入れ替え戦の末に残留を果たした1985-1986シーズン以来のことだ。スポーツディレクターのツォルクも、こう認めている。
「これまでは上を見ていたが、それも今日までだ。(中断期間となる)クリスマスまでは出来るだけ多くの勝ち点を積み重ねるために戦う。我々は残留争いの真っただ中にいるのだ」
そんな危機に置かれたドルトムントで、香川真司は何をすべきなのだろうか。
11月30日に行なわれた第13節のフランクフルトとのアウェーゲームでは、いくつかの気になるシーンがあった。
前半7分、オーバメヤンが自陣から来たボールを香川に落として、カウンターが始まる。香川がドリブルで右サイドのスペースへ侵入。ムヒタリアンがペナルティエリアに入っていったが、香川はそのままシュートに持ち込み、GKにブロックされてしまった。
あるいは26分のカウンターのシーン。グロスクロイツの落としたボールを香川が中央で受ける。目の前には2人のディフェンダー。左サイドで香川からパスを受けたムヒタリアンがシュートを放つが、右に外れてしまった。
スピードを追求するあまり、精度が失われている。
いずれの場面でも、一見最適な判断をしたように見える。
しかし以前のコラムでも触れたように、近年のドルトムントは縦への速さを追求するあまり、ゴールへの精度が失われているのだ。
プレーのスピード自体は確かに速く、相手を後手にまわらせるシーンは多々ある。しかしスピードを重視するあまり、確率の高いプレーを選択できなくなっているのだ。
『キッカー』誌が算定する決定機の数と決定率のデータを見ても、それは明らかだ。
決定機……83回(リーグ5位)
決定率……16.7%(リーグ17位)
見てのとおり、決定力不足が深刻な問題となっているのだ。