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鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。
ランナーと非ランナー、共存の道は? 

text by

山田洋

山田洋Hiroshi Yamada

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photograph byMami Yamada

posted2014/10/11 10:40

鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。ランナーと非ランナー、共存の道は?<Number Web> photograph by Mami Yamada

鎌倉市内の天園ハイキングルートを走るランナー。ハイカーや家族連れでも賑わう(写真はイメージ)。

陳情書採択に賛成、反対した議員に話を聞くと。

 陳情書を採択した鎌倉市議会の議員はこの問題をどう考えているのか。採択に賛成した長嶋竜弘議員と、反対した池田実議員に話を聞いた。

「レースは控えたほうがいいなとは考えていますが、採択に賛成することでこの問題がしっかり議論されてほしいと思いました。トレイルランに賛成派も反対派も関係する人たちが集まってオープンな形で対話を重ねて欲しいんです。本来なら、“お上”が決めるというのは恥ずかしいことだと思いますから」(長嶋議員)

「委員会で双方の意見を聞いていないのが気になり反対しました。それと該当するハイキングコースは7割が民間の土地。民間の土地や公道を条例で規制することに疑問を抱いたんです。公道でのランニングを規制するってことですよ? 条例って“法”ですから、重いんですよね。現段階でそこまでする必要はないと考えました」(池田議員)

 2人に共通していたのは、関係者の話し合いの場を設ける必要性を感じていたこと、そしてハイキングコースの安全面を考慮して、レースは控えるべきだという点だった。

 一方、採択後に当該案件を預かる鎌倉市の観光商工課はこの問題をどう捉えているのか。齋藤課長に話を聞いた。

「現段階では、トレイルラン規制を条例化するつもりはありません。陳情書に沿って事態を少しでも前進させ、収束させたいと考えています。具体的には鎌倉市内のハイキングコースを使用したレースの開催を自粛して頂くこと。主催者にお願いをしていくつもりです」

 トレイルランナー個人を規制することはもちろん、セミナー形式などの団体での利用は、マナーやルールを丁寧に教えているため、特に規制対象とは思っていないということだった。

「鎌倉トレイル協議会準備委員会」が発足。

 こうした動きの中で、長年トレイルランニングに親しみ、また同市でアウトドアに関わる鎌倉市在住者を中心に「鎌倉トレイル協議会準備委員会」が発足したのが7月初旬。

「陳情書について個々にはいろいろ話し合っていたんですが、私と会長の滝川さんが6月に、鎌倉市長と議長それぞれに『陳情書に対する要望書』を提出したのが最初のアクションです」

 そう話すのは、同協議会副会長でもある篠健司さんだ。その後、鎌倉市役所を訪ね、齋藤課長と面会した。

「トレイルランに反対する側のご意見は幅広く承ってきましたが、推奨する側の方々と新たなパイプができ、建設的な意見交換ができるようになればと大きな期待を持ちました」(齋藤課長)

【次ページ】 愛好家同士の話し合いで、鎌倉でのレースは中止に。

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