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世界柔道3連覇達成、海老沼匡が目指すもの。
~軽量級No.1のあくなき姿勢~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2014/09/14 10:30

世界柔道3連覇達成、海老沼匡が目指すもの。~軽量級No.1のあくなき姿勢~<Number Web> photograph by AFLO

決勝では、地元ロシアのミハイル・プリャエフと対戦。開始2分足らずで内股で一本勝ち。

 8月26日、ロシア・チェリャビンスクで行なわれた柔道の世界選手権66kg級で海老沼匡(まさし)が優勝した。2011年から同大会3連覇である('12年は五輪のため開催なし)。日本男子では山下泰裕、井上康生らに続く5人目、軽量級では初という事実がその価値を物語る。

 印象的だったのは準々決勝だ。海老沼は最大の難敵ザンタラヤを相手に積極的に攻め続け、技ありを奪う。ところがその判定が覆り、ポイントなしとされる。それでも落ち着いて戦い抜き勝利。続く試合でも安定した柔道を見せた。

 海老沼はロンドン五輪では3位に終わっている。大会後、行き着いた敗因は心の安定感だった。旗判定にもつれた準々決勝では一度は相手に旗が上がったもののやり直しとなって結果が覆り、場内は騒然とした。その動揺を準決勝に引きずったことが響いたと捉えた。それを思えば、まぎれもなく成長を見せたのが準々決勝以降の戦いぶりだった。

単身で渡仏し、片言のコミュニケーションで得た自信。

 その進化を促したのは、今年4月の全日本選抜体重別選手権の準決勝で一本負けを喫したことにある。練習を豊富にこなし、自信をもって臨んだはずなのに、それでも敗れたことがショックだった。

「負けたのは何かが足りないからだと思います」

 すでに世界チャンピオンになっている。それでも足りないものを探すためにどうするか。海老沼は、いまや日本を上回る柔道大国であるフランスに単身渡ることを決めた。海外に一人で行くのは初めて。現地では通訳もいない。あえて厳しい環境に身を置きたかった。

 言葉ができなくても、自ら動かなければ何も始まらない。練習中あるいは生活の中で、片言で必死にコミュニケーションを図り積極的に行動する中で、少しずつ打ち解け、不安や緊張は薄れていった。予定していた約3週間が過ぎたあとには、もっと新しい自分に挑戦していこうという気持ちと、自分は強くなれたという思いを抱くことができた。そんな経験が、世界選手権に生きていた。

 表彰式のあと、海老沼は言った。

「ほんとうにオリンピックで金メダルを獲りたいと思いました」

 勝てば勝つほど、かなえていない目標への思いも募る。それが海老沼をさらに強くさせる原動力となる。

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