SCORE CARDBACK NUMBER

車いす王者も脱帽する、泰然自若の20歳新女王。
~上地結衣、全仏テニスを制す~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2014/06/30 10:30

車いす王者も脱帽する、泰然自若の20歳新女王。~上地結衣、全仏テニスを制す~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

全仏シングルスでアベック優勝した上地(左)と国枝。上地はダブルスも制覇し、単複2冠。

 英語のウィナーズスピーチも堂々たるものだった。全仏オープンの車いす部門で上地結衣が初優勝。シングルスでは四大大会初の頂点だった。

 男子車いすテニスの王者、国枝慎吾が「弱点がない」と絶賛する上地のプレー。左利きのフォアのストロークは攻撃力があり、バックハンドをつかれてもスライスで丁寧に配球する。1年前には千川理光コーチが「本人と相手の調子に(勝敗が)左右されるところがある」と話していたが、今や盤石の安定感を備え、この5月には初めて世界ランク1位になった。

 初めて話したときに感じた「しっかりした子だな」という印象は、2年経ってますます強くなっている。接戦となった決勝の第1セットを振り返り、「タイブレークになれば取れる自信があった」と言いきる。重圧のかかる状況のはずだが、「1ゲームの中では相手のいいところも出てくるが、タイブレークは1ポイント1ポイント(の勝負)。相手の方がミスも多いし、自分から攻めていく自信もあった」というのだから恐れ入る。

世界ランク1位、四大大会初Vも「まだまだ先がある」。

 試合後の談話は、文字に起こせばそのまま文章になるくらい、簡潔で要領を得たものだ。この20歳は、頭と心を常に整えてテニスと向かい合っているように見える。「どんな舞台でも物怖じせずプレーできる」と国枝は半ばあきれ顔で言う。イライラや落胆を露骨にあらわす選手もいるが、上地は常に冷静にファイトする。この大会でも、感情を吐き出したのはただ一度。決勝のマッチポイントを制し、「カモン!」と叫んだ時だけだった。

 世界ランク1位についても「自分のプレーの結果なので、もちろんうれしいですが、あまり意識はしていません」。四大大会初優勝にも、少しも浮かれたところを見せない。一番うれしい勝利、と思えたのは優勝を決めた瞬間だけ。観客席のコーチの顔を見た上地は、すぐにこう思ったという。「まだまだ先がある」

 二人のゴールは、2年後のリオ・パラリンピックの金メダルにある。「ランキングに見合う実力ではない」。千川コーチからこの言葉を何度か聞いたことがある。過小評価しているわけではなく、まだやるべきことが多い、国枝の域には遠い、と戒めるのだ。優勝の瞬間、コーチと教え子は目と目で語り合い、あと2年の精進を誓い合ったに違いない。

関連コラム

関連キーワード
上地結衣
国枝慎吾

ページトップ