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“今の西武らしさ”を貫いて復権を。
田辺監督代行と選手の厚い信頼関係。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/06/09 12:15

“今の西武らしさ”を貫いて復権を。田辺監督代行と選手の厚い信頼関係。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

初陣となった巨人戦で、メンバー表確認を行なう田辺徳雄監督代行。自身が選手時代に経験した「黄金時代」は再び西武に訪れるか。

「管理野球」は選手への押し付けでしかなかった?

 広岡達朗が監督を務めていた'80年代の「管理野球」よろしく、茶髪、ひげは禁止。ユニフォームの裾をたくし上げる「オールドスタイル」を統一させた。ある選手にインタビューをした際、写真撮影で「裾上げないと。怒られちゃいますから」と苦笑いを浮かべながら、監督の意向に渋々と応えていたものだ。

 練習や野球そのものも変わった。

 春季キャンプは「2部制」のランニングなど体力強化がメイン。シートノックは中盤までせず、紅白戦もたったの1試合と実戦をほとんど積まずシーズンを迎えた。その反面、試合では1球1球にサインを出し、偽装スクイズなどサインプレーを出すなど細かい野球を徹底するなど、その矛盾は選手を困惑させた。

 伊原政権下でプレー経験のあるOBはかつて、彼の野球をこのように言い放った。

「あの人は結局、自分がやりたい野球を選手に押し付けているだけ。周りは『緻密だ』とか評価するかもしれないけど、やっている選手からすればそうは思わなかった」

 結果は散々だった。

 6月4日の段階で20勝33敗の最下位。この日のDeNA戦後、伊原監督は「休養」という名目での退任を発表することとなった。

田辺監督代行就任は、'10年のヤクルトに似ている。

「監督が引けばいい風が吹く」。田辺徳雄打撃コーチに監督代行として再建を託し、伊原監督はチームを去った。

 野球において「1年の計」はキャンプにある。春にチームが目指す野球を的確に見定め、練習や実戦で完成度を高めていく。その観点から分析すれば、シーズン途中での監督解任は致命的とも判断できるのだが、今の西武に関しては一概にそうとも言い切れない。

 なぜならば、監督代行が田辺だからだ。

 今回のケースに近い事例を挙げるとすれば、'10年のヤクルトがそうだった。

 5月27日の時点で13勝32敗1分。不振の責任をとり高田繁監督が辞任したが、ヘッドコーチの小川淳司が代行として指揮を執ると、翌日以降に息を吹き返す。59勝36敗3分。最下位はおろか、シーズン終盤にはクライマックスシリーズ進出争いを繰り広げるなど4位まで順位を押し上げたのだ。

 小川は二軍監督を9年間務め、'08年からヘッドコーチを任されていた、言うなれば首脳陣のなかで誰よりもチームを知っている男だった。その彼が後任となったことで我慢強い起用もできるようになったし、選手も期待に応えるようになっていったのだ。

【次ページ】 巨人戦で出た渡辺政権時のような「西武らしさ」。

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