1点が必要でも、ポジティブな空気だったハーフタイム。

「うまく守備も出来ていたので、『後半、勝負だ』といっていました」

　0－0で迎えたハーフタイムのロッカールームの雰囲気について、香川はポジティブなものだったと振り返っている。そして、こう続けた。

「後半に入ったら、多少は時間とともにリスクをとって前に出ていく時間帯もあったと思いますし。それを上手く試合をみて、流れを読んでやるようにしましたけど」

　マンチェスターで行なわれた1stレグが1－1で終わったため、ユナイテッドはこの試合で少なくとも1点をとらないと敗退が決まる。それはチームの選手たちの頭の中にもしっかりと刻み込まれていた。

　後半10分、ハーフウェーラインを超えたところでフレッチャーからのパスを受けた香川が前を向くと、ドリブルで運び、ペナルティエリアの手前から思い切りよくミドルシュートを放つ。抑えの利いたシュートはノイアーにキャッチされたものの、チームとしてゴールへ向かう意識は香川のプレーにも表れていた。

狙い通りの先制、そして2分後の同点劇……。

　そして後半12分、試合が動く。

　バレンシアが右サイドでアラバをかわして、かけあがる。追走してきたクロースのマークをものともせず、クロスを上げる。ファーサイド、ペナルティエリアにさしかかるあたりへ飛んだボールに対して、後方から勢いよくあがってきたのが左サイドのエブラだった。

　迷うことなくダイレクトでたたいた左足のシュートが、ゴール右上につきささる。名手ノイアーでも、これはノーチャンス。ユナイテッドがプラン通りに、先制ゴールを決めたのだ。フィールドプレーヤーがエブラのもとに殺到して、ゴールを祝う。彼らの狙いが結実した瞬間だった。

　しかし、わずか2分後。

　バイエルンの左サイド、ハーフウェーラインを少し越えたところでパスを受けたゲッツェがドリブルでつきすすむ。慌ててフレッチャーが追走するが、その外側をリベリーが走っていく。右FWのバレンシアがマークにつくのか、右サイドバックのジョーンズがつくのか、あいまいだった。

　一瞬の守備の隙が生まれたのだ。

　ゲッツェがエリアにさしかかるところで止まると、外側にいたリベリーへパス。マークがついてきていないことを感じたリベリーは素早くクロスを送った。中央でマンジュキッチが頭で合わせて、またたく間に同点ゴールを奪った。

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