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<真価の問われるシーズンへ> 宮里優作 「僕のゴルフは変わらない」 

text by

赤坂英一

赤坂英一Eiichi Akasaka

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/03/26 11:50

昨年の日本シリーズ、プロ生活10年で1勝も出来なかった男が、
11年目で初めて勝者になった。最後のショットを決めた瞬間、
足下から崩れ落ち、人目もはばからずに号泣した。
あの劇的な場面の主人公が、初勝利までの困難な道のりと、
知られざる家族の絆、そして新シーズンへの思いを語った。

 勝利はときとして、その選手の人生を一変させる。それが劇的であればあるほど。

 昨年12月8日、男子プロツアーの最終戦、東京よみうりCCで行なわれた第50回日本シリーズJTカップの最終日、宮里優作は悲願の初優勝を果たした。プロ生活10年間で1勝もできず、常に敗者であり続けた男が、11年目にして初めて勝者になったのである。近年のゴルフ界で最も劇的だった場面の主役を演じ、年が明けてまた新たな戦いに臨む宮里は、あの初勝利でどのように変わったのか。

「ゴルフが怖くなくなりました。いままでに抱いた恐怖心、悪いイメージ、ネガティブな考え方、そういうものがすべてなくなった」

 そう言いながら、「しかし、ぼくのゴルフは何も変わりません」と、宮里は続けた。

「勝てなかった間、自分がやってきたことはやはり間違いじゃなかったんだと、あの優勝で実証できたと思うんです。ぼく自身、積み重ねてきたものの大切さや重要さを、勝って改めて実感できました。だから、自分がやるべきことを変える必要もないんですよ」

 自分のゴルフに、揺るぎない自信を持てたこと。これが初優勝の最大の収穫だった。

「積み重ねてきたもの」が凝縮されたチップイン。

 最終日、2位に3打差をつけて迎えた最終ホール。ティーショットが曲がって左の斜面を転がり、第2打のアプローチもピンを通り過ぎてラフにはまる。そこからの第3打が鮮やかなチップインパーとなってカップに消えたあと、宮里は足下から崩れ落ち、人目もはばからず涙を流した。その姿を見つめていた妻、両親、もちろん妹・藍も家族みんなが抱き合って号泣している。

 決して狙いすましたチップインではない。入った瞬間、宮里自身も「まさか」と思ったという。しかし、あの一打にこそ、それまで「積み重ねてきたもの」が凝縮されていた。

「昔のぼくはああいう場面になると、どうしても悪いイメージばかりを思い浮かべていました。そもそも、ゴルフって勝つことよりも負けることのほうが多いスポーツでしょう。だから、ああ、またダメなんだろうかと後ろ向きなことを考えがちだった。それなのに、あのときはそういうネガティブな思考がほとんど頭に浮かばなかったんです。自分がどういう状況でどう打ったか、ものすごくクリアに見えて、しっかり集中することができた」

<次ページへ続く>

【次ページ】 劇的な一打を可能にした「ビジョン54」トレーニング。

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