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かつての美しさはどこへ行った!?
F1のイメージを覆す新車に唖然。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/02/01 08:15
ヘレス合同テストでレッドブルが発表した、2014年シーズンの新車「RB10」。フロントノーズの形状をはじめ、かなり見慣れない形であることは間違いない。
「ニューウェイ、お前もか!!」
セバスチャン・ベッテルと新しく加入したダニエル・リカルドの手によって、レッドブルの新車RB10のベールが外された瞬間、多くのファンが心の中でそんな言葉をつぶやいたに違いない。
新しいシーズンを迎えたF1界は、1月下旬に入ってニューマシンの発表が続いている。1月24日にマクラーレンが、そして翌25日にはフェラーリが、それぞれインターネット上で新車をお披露目。ザウバーやウイリアムズもこれに続いた。
通常であれば、新車の発表会は1年でもっとも盛り上がる時期のひとつだが、今シーズンはいつもと雰囲気が違う。それは、どのチームのニューマシンにもある共通点があり、それがこれまで私たちがF1マシンに抱いていたイメージを大きく覆しているからである。
それはノーズの形状だ。
F1マシンのノーズは、いつの時代も速さの象徴だった。'50年代に葉巻型だったノーズは'70年代に入ると楔(くさび)形のシャープなスタイルとなり、ウイングカー全盛の'70年代後半から'80年代前半は、あえてフロントウイングを取り外したマシンが流行した。ウイングカーが禁止され、'90年代に入ると、今度はノーズを上げて空気を積極的に取り込むアイディアが主流となった。
「アリクイ」型と「カモノハシ」型の奇妙なノーズ。
いつの時代もレギュレーションに合わせて、ノーズの形は変化し、私たちはそれを最初のうちは戸惑いながらも、シーズンが始まると「進化」ととらえ、速さこそが美しさだと納得してきた。
ところが、今年新たに変更されたレギュレーションによって開発されたF1マシンは、スピードを追求するために正常進化したノーズではなく、まるで新種の生物が誕生したかのような、これまでのフォーミュラカーで見たこともない奇抜なノーズをまとっていたのである。ひとつはマクラーレンに代表される「アリクイ」型。もうひとつはフェラーリに代表される「カモノハシ」型だ。