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40歳目前でもまだ投手は進化できる!
世界一の上原浩治、異次元の制球力。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2013/11/01 11:55
ワールドシリーズで世界一決定の瞬間のマウンドを任された上原。ポストシーズンで7セーブとメジャータイ記録に並んだ。
“KOJI TIME”が毎日、待ち遠しかった。
上原浩治には、私が担当している番組(NHK「BSベストスポーツ」)で月に一度、出演してもらっていることもあるし、6月にはボストンで実際にインタビューもした。ちょうどクローザーに指名された時期である。
あれから4カ月、ワールドシリーズ優勝の瞬間をマウンドで体験するという、最高の結末が用意されていようとは、想像できなかった。
正直にいえば、ワールドシリーズでは上原を、そしてレッドソックスを応援した。
全力投球する姿に、胸を打たれたことを告白しておく。
「コントロールは3番目の球種」
さて、分析に入ろう。
今季、上原の投球には変化が見られた。昨季までは「フライボール・ピッチャー」だったのが、「グラウンドボール・ピッチャー」に変身した。この変身ぶりが安定感の源になったのである。
そのあたりの分析は9月13日配信のコラムにすでに書いているが、もうひとつ、上原本人がシーズン中に語った言葉で印象的なのが、
「コントロールも“球種のひとつ”なんです」
というものだった。
一瞬、「?」が頭の中に浮かんだ。
かみ砕いて考えてみると、新しい変化球をマスターしたときに得られる「自信」、それと同じような充実を「制球力・コントロール」そのものに感じていたのだろう。かなりの確率で、思ったところにコントロールできていたのではないか。