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“狭く濃い”サービスで心をつかめ!
ズムスタで学ぶ顧客満足度のカギ。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/24 10:30
MAZDA Zoom-Zoomスタジアム(ズムスタ)のスコアボードのライト側にできた特別席“寝ソベリア”。マツダスタジアムでは、他にもさまざまなサービスを展開している。
筆者が教鞭をとる経営大学院では、2013年最後の学期が始まった。仙台キャンパスでの授業初日。学生の顔がいつもにも増して明るい。「元気ですね」と声をかけると、「楽天が我々に自信を与えてくれました!」との返事。学生と共にKスタ観戦をしたこともあり、過去最高の128万人を動員したその熱狂ぶりがもたらすスポーツの力に想いを馳せた。
楽天イーグルスの本拠地Kスタは、収容人数約25000人とかなり小さい球場であるが、より多くの観客に足を運んでもらえるよう様々な企画チケットを提供し、ファン獲得に積極的に取り組んでいるチームの1つである。
楽天についてはこのコラムでもとり上げてきたが、座席設定で面白い工夫をしている他球団の例としては、広島カープがある。
広島カープの本拠地MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島では、団体・家族向け特別席が充実していることをご存じだろうか。小さな子供連れでも安心して観戦できるようテーブル付の座席「コカ・コーラ テラスシート」「ゲートブリッジ」「ファミリーテラス」が設置されていたり、畳の座席でくつろげる「鯉桟敷」、そして、パーティー用のスペースや、バーベキューができる「エバラ黄金の味 びっくりテラス」など、野球を楽しみながら家族・友人との団欒を楽しみたい人にふさわしい座席が用意されている。
顧客と従業員の満足度向上が相乗効果をうむ。
さて、楽天イーグルスやロッテマリーンズ、そして広島カープのように、従来の野球ファンのほかに、家族や友人の交流の場としてのスタジアム観戦をアピールする球団が増えている。このコラムではターゲット顧客を明確に定めることの重要性を書いてきた。ターゲットの選定は、従業員が「お客様すべてではなく、どのような顧客を満足させればよいか」を明確に意識することを可能にするため効果的なサービス提供につながる。さらに、サービスの現場では、顧客と顧客のインターラクションが発生しこれが顧客満足度にも影響するため、顧客をターゲティングすることはますます重要になる。
実は、このターゲット顧客を選定することにはもう1つ重要な側面がある。それは、従業員満足度を上げることにある。
顧客と従業員が直接接することの多い環境では、顧客の満足が従業員の満足に「ミラー(鏡面)効果」をもたらし、さらに満足した従業員は顧客の満足に影響を与えるという作用が働く。これを「サティスファクション・ミラー効果」という。