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吉田沙保里を奮起させた、
東京五輪とレスリング存続。
~7年後への一歩、世界大会14連覇~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2013/10/06 08:00

吉田沙保里を奮起させた、東京五輪とレスリング存続。~7年後への一歩、世界大会14連覇~<Number Web> photograph by AFLO

世界大会14連覇を達成した吉田。決勝だけテクニカルフォールを逃し悔しさもにじませた。

 圧勝だった。9月19日、ブダペストで開催されたレスリング世界選手権の55kg級で、吉田沙保里が優勝した。今秋、階級区分が変更されるため、最後となる55kg級での大会を、5試合すべて無失点という完璧な試合運びで飾った。

 吉田は大会前、「ロンドン五輪のときよりも調子は上がっている」と語っていたという。それが試合に表れていたが、オリンピック以上と言える出来にあったのは、新しい目標を見出したモチベーションの高まりにほかならない。

「レスリングへの気持ちが切れたことはありません」

 そう言い続けてきた吉田だが、モチベーションの上下がなかったわけではない。北京で五輪連覇を達成したあとは勝利への欲求を失いかけ、日本代表の栄和人監督も「今までで一番ピンチかもしれないですね」と危ぶむ時期があった。

 それでもロンドン五輪前の国際大会で敗れたことが発奮材料となって五輪3連覇を達成。翌月の世界選手権でオリンピックとあわせて13連覇を果たしてアレキサンダー・カレリンの12連覇を抜き、国民栄誉賞も受賞した。「リオデジャネイロ五輪を目指したい」と言う吉田だったが、意欲を保っていけるのか懸念も再浮上した。このとき30歳、進退が取沙汰されるのも不思議はなかった。

存続に向けての活動の影響を感じさせない圧勝劇。

 そんな吉田の気持ちを一新させたのが東京五輪とレスリングの五輪存続の決定であった。レスリングがなくなるかもしれない危機は消え去り、しかも日本で開催と二重の喜びに、吉田は笑顔で言った。

「私も東京で頑張りたい気持ちになりました」

 存続へ向けての活動などで練習量は少なかったという中での圧勝は、まさに喜びと意欲の高まりの表れであった。

 吉田ばかりではない。体操の内村航平が「7年後もやっていると思います」と語れば、ハンマー投の室伏広治も「次のリオでやめようと思っていましたが、心が揺らぐものがあります」と告白する。

 東京五輪開催は、その頃ピークを迎えるであろう世代ばかりでなく、各競技の第一線にいる選手たちの気持ちを変えた。

 あらゆる世代が「2020」を視野に入れて取り組んでいくこれからの7年間は、日本のスポーツ界がさらに活性化する予感さえ感じさせる。

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