スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペイン代表の正FW候補が登場!
“問題児”ジエゴ・コスタの覚醒。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2013/10/01 07:00
マドリッドダービーでセルヒオ・ラモスと競り合う。腕には大きな入れ墨が踊り、挑発的なプレーを繰り返したディエゴ・コスタを観客は何度も批判した。「ディエゴ・コスタはスペイン人ではない!」とのコールも。
スペイン国籍を取得、代表招集の可能性が……。
苦節6年、ようやくアトレティコの選手として認められるに至ったジエゴは、8月に2018年までクラブとの契約を延長した。
先日は新たな朗報も届いた。7月にスペイン国籍を取得したことで、スペインフットボール協会がFIFAに代表招集の可否を問い合わせたというのだ。
ジエゴは今年3月の親善試合にてブラジル代表デビューを果たしているが、まだ公式戦でのプレー経験はないためスペイン代表を選ぶ権利を持っている。
しかもブラジルのスコラーリ監督は6月のコンフェデレーションズカップに彼を呼ばず、9月の親善試合でもコンフェデ組を継続して招集した。そしてセンターFWのフレッジがケガで不在となる10月の親善試合に向けても、これだけ好調を維持するジエゴを呼ばなかった。
一方のスペインも優秀なFWを多数擁するものの、ビジャが長期離脱に陥って以降は絶対的なストライカーが不在となっている。
既存メンバーのトーレス、ソルダード、ネグレド、ジョレンテらはいずれもデルボスケを納得させることができておらず、今季は現所属クラブで定位置すら掴めていない。これまでの実績を無視して現時点の状態だけを考えれば、絶好調のジエゴは第一に声をかけるべきFWなのだ。
リーガで1、2を争う“素行”の悪さ。
ただ、ジエゴの代表招集に対しては懸念の声もある。理由はリーガで1、2を争う“素行”の悪さである。
報復行為にシミュレーション、レフェリーへの執拗な抗議。メンタルの未熟さから出るこれらの言動により、これまでジエゴは不要な警告や退場処分を受ける過ちを幾度となく繰り返してきた。
そんな彼を煙たがり、厄介者としてきた歴代の監督達とは違い、シメオネは彼に全面的な信頼と責任感を与えることで精神面の成熟を促している。そんな指揮官の下、ジエゴも徐々にプレーに集中できるようになってきたのだが、なにせ多数の“前科”を持つ彼には既に多くの敵がいる。そしてその中には、スペイン代表の常連組も含まれている。
何よりデルボスケはこれまで常にチームの和を最優先し、選手達にも謙虚さや協調性を求めてきた。そんな指揮官がワールドカップまで1年を切った現時点で新たな火種をチームに混入するには、それ相当の理由が必要なはずだ。
逆に言えば、それでもデルボスケがジエゴの招集を検討しているということは、彼の活躍がそれ相応の理由になろうとしている証拠だと言える。