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好調インテルの攻撃を牽引する長友。
その嗅覚、まさに“機を見るに敏”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2013/09/29 08:01

好調インテルの攻撃を牽引する長友。その嗅覚、まさに“機を見るに敏”。<Number Web> photograph by AFLO

より攻撃の比率が増した新ポジションで、長友佑都はゴールに直結するプレーを次々と見せている。

 開幕から好調インテルの勢いが止まらない。

 4節サッスオーロ戦では、セリエA初昇格クラブ相手のアウェーゲームで7ゴール無失点の圧勝。大勝の口火を切る先制点アシストをマークしたのは、長友佑都だった。

 新監督マッツァーリの信頼を勝ち取った左ウイングハーフは、得点機を生み出すキーマンとして、新たな評価を獲得しつつある。

 メンバーの固定起用で開幕ダッシュに成功した指揮官は豪語する。

「私の要求に応えてくれているのが、今のスタメン11人だ。オートマティズムを身につけた彼らには結果もついてきている。トップギアで走り始めた車をわざわざ乗り換える理由がどこにあるというのだ?」

 ただし、新シーズンの序盤戦で自信をつけているのは、インテルだけではない。

 それぞれ外国人新監督を迎えたローマとナポリの南部勢に、3節でインテルと引き分けた王者ユベントス、そしてフィオレンティーナを加えた5強体制が、セリエAの新しい勢力地図だ。

 ユーベ戦での人種差別コールによって、サンシーロの北側ゴール裏席無観客処分を受けたインテルが、5節のホームゲームに迎えたフィオレンティーナは、文字通り難敵だった。

難敵フィオレンティーナに引導を渡した長友のパス。

 FWマリオ・ゴメスとMFクアドラドは故障で長期離脱中、司令塔ピサーロも出場停止とあっては大幅な戦力ダウンは避けられないはずが、2度の右膝靭帯断裂から復活を遂げたFWロッシが、今季公式戦6戦5発の大活躍でチームの牽引役に。

 若き戦術家モンテッラは、固定起用路線のマッツァーリとは真逆に、4節までに3つの異なる布陣と大量23人もの選手をやりくりしながら、数年前のバルセロナをほぼ完璧に再現し、徹底した攻守のトライアングルでインテル守備陣を追い詰めた。

 後半15分、ロッシのPKによって、インテルはついに今季初のリードを許してしまった。

 だが、智将マッツァーリは怯むどころか即座に動く。これまでのゲームでも繰り返されてきたように、後半途中のMFコバチッチ投入は、“攻めろ!”のサインだ。ベンチの攻める意思を確認した選手たちは、迷うことなく前へ出た。

 長友が、20分に左サイドのドリブル突破からシュートを打つ。5分後には、不本意なファウルでイエローカードをもらうと、珍しく右腕を振り上げて闘志を露わにした。

 左CKからMFカンビアッソの左足ボレーで同点に追いついた後も、インテルの猛ラッシュはやまない。

 38分、長友は自陣からボールを受けると、間髪入れずに左サイド前方へ走るMFアルバレスへパスを出した。

 アルバレスは、右からペナルティエリアへ走りこむ右ウイングハーフのジョナタンへクロスを放つ。飛び込むDFをかわしてジョナタンが右足で蹴り込んだ逆転ゴールは、アルバレスを介した両ウイングハーフによる会心のゴールだった。

 そして長友が出した1本のパスこそ、決勝点の起点に他ならない。

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