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残留の立役者がまさかのベンチ生活。
吉田麻也が再び救世主になるために。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/09/21 08:02

残留の立役者がまさかのベンチ生活。吉田麻也が再び救世主になるために。<Number Web> photograph by Getty Images

「こっからまたレギュラー争い頑張ります」と自身のブログでも宣言している吉田。W杯予選での仕事が一段落した今、サウサンプトンでの定位置復活が待たれる。

 救世主が急降下の悲劇。サウサンプトンにおける吉田麻也の現状は、日本の吉田ファンの目にそう映るかもしれない。

 昨季の吉田は、降格が予想されたサウサンプトンの14位残留に大きく貢献した。プレミアリーグでのデビューこそ、第4節アーセナル戦で大量6失点の苦い思い出となったが、その後は、試合を重ねるに連れて存在感を増した。

 監督が、ナイジェル・アドキンスからマウリシオ・ポチェッティーノに代わった後半戦でも頼りにされた。リーグ戦32試合出場は、チームのCB陣では最高の数字だ。その吉田が、今季は開幕からピッチに立てず、第4節ウェストハム戦(0-0)までに、3試合でベンチからも漏れてしまったのだ。

 昨季の第1CBの控えへの降格は、サウサンプトンの地元ファンにも予想外だったようだ。クロアチア代表CB、デヤン・ロブレンの獲得が決まった6月半ば、彼らがベンチ生活の危機を予想していたのは、吉田のパートナー役を競った状態で昨季を終えた、ジョゼ・フォンテとヨス・ホーイフェルトだった。今季の正CBコンビは、攻撃の起点となれる共通点を持つ一方で、力強く守れる「剛」のロブレンと、頭を働かせて守る「柔」の吉田が、互いを補い合うパートナーシップが理想的と思われた。

13億円で獲得したロブレンが頭ひとつリードか。

 ところが、いざ蓋を開けてみると、開幕からロブレンとフォンテのコンビが続いた。指揮官は、人選の理由を次のように述べている。

「昨季とはチーム事情が変わり、CB4名が戦力として揃っている。その中から、ロブレンとフォンテが選ばれているにすぎない」

 選手の序列を公言する監督などいるはずもないが、ポチェッティーノが、最終ラインの新たな主軸として、ロブレンを意識していることは想像に難くない。指揮官として真価が問われるサウサンプトンで初のフルシーズン、リヨンから獲得した新CBは、自身の見立てによる「活かしたい新戦力」。いや、移籍金約13億円を要した「活かさなければならない」新戦力だ。加えて「個」の力でも守れるロブレンが、吉田を含む他のCB3名と比べて、頭ひとつ抜け出ていることも事実だろう。

【次ページ】 4試合で2失点と上々のスタートに見えるが……。

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