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Wシリーズの陰で喝采を
浴びたナックルボーラー。
~T・ウェイクフィールドの功績~ 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2010/11/14 08:00

メジャー18年間で通算193勝172敗。今季は4勝ながらチャリティ活動が高く評価された

メジャー18年間で通算193勝172敗。今季は4勝ながらチャリティ活動が高く評価された

 総立ちの拍手が、その重みを表しているかのようだった。ワールドシリーズ第2戦の試合前、「ロベルト・クレメンテ賞」の表彰式が行なわれた。今年の受賞者は、レッドソックスのティム・ウェイクフィールド投手。「クレメンテが残した伝統は、我々アスリートが、フィールド外で何をすべきかということの典型なんだよ」。今年44歳のナックルボーラーは、本拠地ボストン近郊や自宅のあるフロリダで、10年以上にわたり、1億円以上の自費をかけて野球教室やチャリティ活動を続けてきた。そんな地道な功績に対し、大リーグ機構は「ロベルト・クレメンテ賞」として、毎年1選手を表彰してきた。

 プエルトリコ出身のクレメンテは、パイレーツの強肩好打の外野手として活躍し、メジャー18年間で3000本安打を放ち、ゴールドグラブ賞を12回獲得した。その一方で、チャリティ活動にも熱心で、'72年12月にニカラグア地震の被災地へ自ら救援物資を運ぶ際、飛行機がカリブ海へ墜落し、38歳の若さでこの世を去った。翌年、クレメンテは特例で野球殿堂入りし、それまで「コミッショナー賞」と言われていた名称が故人の名前に変わった。

日本でもチャリティ活動は盛んになってきたが……。

 古くからメジャー球界は、チャリティ活動への関心は高かった。ベーブ・ルースが病気の少年を見舞い、約束通りに本塁打を打ったのは有名な逸話だが、今では選手個々だけでなく、組織全体で取り組むなど、活動の範囲は実に幅広い。大リーグ機構が中心となっているものだけでも、少年野球、乳がん、戦没者など、基金の使途は多岐に及ぶ。また、各30球団が独自の地域活動を行なっており、車いすに乗った障害者が、エレベーターや案内係など職員として働いている球場も少なくない。

 日本でも、チャリティ活動は年々盛んになってきた。その半面、善行は目立たないようにする、という日本人特有の美徳があるのも否定できない。だが、プロとして率先してファンに還元し、周囲を啓蒙する役割もある。今季から三振基金などを始めたレッドソックスの松坂は言った。「僕達はいろいろな人に助けてもらってきた。活動はプロスポーツ選手としての責任だと思います」

 不況が長引く時代だからこそ、野球界にしかできないこともある。

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