SCORE CARDBACK NUMBER

アマの五輪意識が招く、
プロとの対立激化。
~ボクシング界の協調路線に綻び~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byBOXING BEAT

posted2013/08/07 06:00

アマの五輪意識が招く、プロとの対立激化。~ボクシング界の協調路線に綻び~<Number Web> photograph by BOXING BEAT

ヘッドギアを着けた最後のエリート男子の試合になった関東大学リーグ戦。拓殖大が優勝。

 AIBA(国際ボクシング協会)の号令一下、7月1日から大幅に改訂されたルールが日本のアマチュアの試合でも施行されている。

 採点方法は、コンピューター依存の加点法から、プロとほぼ同様の「ポイント・マスト・システム」に替わった。'88年ソウル五輪での“歴史的地元判定”を機に導入されたコンピューター採点を、複雑な集計方式によりジャッジの多数が認めたのと逆の判定が出る矛盾があったのでやめるというのだが、今になって「コンピューターから人の目へ」というのもどうか。どのラウンドも「10-10」とせず優劣を付けよというのだから、今後判定を巡るトラブルが増えそうだ。

 さらにエリート(19歳以上)男子の試合で、これまで義務付けてきたヘッドギア着用もやめる。冗談か本音か「これ以上馬鹿になりたくないから、ヘッドギアを外すならもうやりたくない」と語っていた某有名選手はどうするのだろう。

“見せること”に力点を置いたルール改訂に戸惑うのは現場。

 他にも、長年馴れ親しんだRSC(レフェリーストップ・コンテスト)の呼称をTKOに改めたり、従来反則に厳しく、主審が頻繁に試合を中断して与えてきた警告も、試合のスムーズな進行を妨げるので控えるという方針らしい。

「アマチュアボクシングは競技者のためのスポーツ、プロのような見世物じゃない」というのが当事者たちの矜持でもあった。その理念からすると“見せること”に力点を置いた今回のルール改訂に、現場が戸惑うのも理解できよう。

 こうした一連の規則改訂は、一見アマがプロに近づいているかのようだが、そうではない。近年のAIBAのやり方はテレビ視聴者にとって面白く、分かりやすい競技にという「五輪方式」を意識したもの。これはIOC理事も兼ね、9月のIOC会長選挙にも立候補する辣腕・呉経国AIBA会長の意向だ。

 次回リオ五輪からボクシングでもアマとプロが一緒に参加するが、このプロとは既存のプロではなく、AIBAが独自に設立したプロ組織(APB)から選ぶ。アマの逸材を囲い込む強引なやり方に既存のプロ、特にWBC(世界ボクシング評議会)のスレイマン会長が猛反発し、両者の対立はますます激しさを増している。アマ・プロ協調路線に綻びが目立つ日本も影響を受けそうだ。

関連コラム

関連キーワード
リオデジャネイロ五輪
オリンピック

ページトップ