日本代表、コンフェデ道中記BACK NUMBER
スペインのパスサッカーに思う、
日本代表の“強さ”なき“上手さ”。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/17 11:45
日本代表の中では屈指の身体の強さを誇る本田だが、ブラジル戦では激しいマークにバランスを崩すシーンが何度も見られた。
日本対ブラジル戦の結果には、メキシコの関係者も失望したかもしれない。
4月24日のチリ戦を最後に、代表でもクラブでも得点をあげていなかったネイマールは、前半早々にワールドクラスの一撃を突き刺した。後半開始直後にパウリーニョが追加点をあげ、日本の反撃が散発だったこともあり、ネイマールは74分でピッチを去る。2戦目以降に備えて、体力を温存できたのだ。
主砲が長いスランプから抜け出したブラジルは、チーム全体が自信を取り戻し、なおかつ勢いをつかんだ。6月19日に対戦するメキシコにすれば、ネイマールにはもう少し眠っていて欲しかったはずだ。
初戦で黒星を喫したチームがグループステージを突破するのは、かなりハードルが高い──ワールドカップなどのたびに言及される定説だが、コンフェデ杯には必ずしも当てはまらない。
現行の8カ国参加となった1997年以降の6大会を振り返ると、'99年にサウジアラビアが、'03年にコロンビアが、'09年にアメリカが、初戦を落としながらグループ2位に滑り込んでいる。ブラジルに完敗した日本も、上位進出のチャンスが潰えたわけではない。
スペインの「うまさ」と日本の「うまさ」の違いとは?
15日のブラジル戦以降、「うまい」ということの意味を考えている。
ザック率いる日本の強みが、テクニックにあるのは間違いない。試合前の練習などで見るボール回しは、かなりの高水準だ。ブラジルと比べてもさほど見劣りしないな、と感じた。ボール扱いはうまい。巧みだ。
しかし、実際のゲームで「うまさ」が存分に発揮されているかというと、首肯できないところがある。ワールドカップ最終予選でも物足りなさを感じたし、15日のブラジル戦は言うまでもない。
胸中にとどまるモヤモヤを解消してくれたのは、テレビで観戦したスペイン対ウルグアイ戦だった。
スペインと言えばポゼッションサッカーであり、パスサッカーである。パスのテンポが良くて、ボールのつながりにリズムがあり、攻撃の狙いが意外性に富む。ブスケッツ、シャビ、イニエスタ、セスク、ペドロとバルセロナ所属の選手がごっそり先発に名を連ね、ウルグアイをポゼッションで圧倒した。
スペインと対戦した、ウルグアイの選手の心理を探ってみる。もし僕が試合後に感想を求められたら、迷わずこう答える。
「うまいだけじゃないのがスペインで、だから難しいんですよ。彼ら、フィジカルコンタクトに強いですから」