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日本ハムを超える“最強”外野陣へ!
ロッテ・清水雅治コーチの育成法とは?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/05/22 12:15
日本ハムとの対戦時、“教え子”の中田翔をいじるロッテの清水雅治コーチ。
ルーキーの豪快な一発だった。
5月12日の対楽天戦。
ロッテ・伊東勤監督は、昇格したばかりのルーキー、加藤翔平をスタメンに抜擢した。すると加藤は、第1打席の初球をたたいて右翼スタンドにアーチをかけたのだった。
昨季のパ・リーグ首位打者・角中勝也が左太腿痛で離脱。その代役・加藤が活躍したことは、ロッテの選手層の厚さそのものを表しているといっていい。
12球団でもっとも外野のレギュラーが定まっていないチーム、それがロッテである。規定打席に達している打者が離脱中の角中だけしかいないのだ。
レギュラーが定まっていないということは、それほど全幅の信頼が置ける選手がいないことの証ともいえるが、ロッテの場合、その選手同士の競い合いがチームに大きな成長をもたらしているようだ。
開幕時は、中堅手に岡田幸文を置き、右に清田育宏、左に角中という布陣を敷いていた。ここに左投手の場合は伊志嶺翔大を起用するというのが伊東監督の起用法だった。
ところが、守備のスペシャリスト・岡田の打撃不振が続くと、ポジションがめまぐるしく入れ替わる。
角中だけが固定され、思い切りのよい打撃と足のある伊志嶺、勝負強さと強肩が持ち味の清田、ベテランのサブロー、長距離砲の神戸拓光が定位置争いを繰り広げた。さらには、5月6日のソフトバンク戦で、清田が4三振すると、荻野貴司がファームから昇格し、爆発的な脚力を生かしてレギュラー争いに参入。そして、5月12日、角中の故障離脱により、加藤が名乗りを上げたのだった。
糸井嘉男、陽岱鋼、中田翔という最強外野陣を作った男。
多士済々の外野陣を語る上で外せないのが、日本ハムコーチ時代に、糸井嘉男(オリックスに移籍)、陽岱鋼、中田翔という最強外野陣を作った、清水雅治・外野守備走塁コーチの存在である。現役時代は中日・西武で俊足の外野手として鳴らし、引退後は西武と日ハムで指導してきたコーチである。
糸井、陽は昨季のゴールデングラブ賞、中田はリーグ断トツの19補殺を記録。ここ数年の外野陣では最強トリオだったといっていい。
「まずは、守備への意識を変えてやることが一番大事なんじゃないかなと思います。それだけでも選手として大きく変わるんじゃないでしょうか。(中田)翔なんかもそうだった」
そう語る清水コーチは、野手として重要な要素に守備力を挙げる。
例えば、中田翔――。
豪快なバッティングが特長のスラッガーだが、彼の成長の裏には、実は守備への意識改革もあったのだと清水はいう。
「翔が内野をやめて外野にコンバートになった時、守れる選手になれなきゃクビになるよという話をしました。どれだけバッティングが持ち味だといっても、DHは外国人のために使うものだし、守れなかったら我慢して使ってもらうことはできない。翔に限らずのことだけど、野手はバッティングのことばかりを気にする。まずしっかり守れることがシーズンを通してプレーするためには大事なんですよ。守備力があれば、監督が長く試合に使ってくれる。そうすれば多くの打席に立てるでしょ」