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38年ぶりセンバツ優勝も見えてきた!?
高知が誇る“二人で一つ”の継投術。  

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2013/04/01 20:15

38年ぶりセンバツ優勝も見えてきた!?高知が誇る“二人で一つ”の継投術。 <Number Web> photograph by Kyodo News

仙台育英を下し、38年ぶりの準決勝進出を決めて喜ぶ坂本優太(中央)ら高知ナイン。

「タイプが違う」ゆえのアジャストの難しさ。

 3回戦で同じく高知の継投に敗れた常葉菊川の森下知幸監督がこう話していた。常葉菊川は1回戦で2本塁打、2回戦ではドラフト候補として騒がれる報徳学園のエース・乾陽平を打ち崩してきた打撃力に自信のあるチームだった。

「エースの酒井君は、2回戦で対戦した報徳学園の乾君ほどのピッチャーだとは思えませんでした。坂本君に関しても、いい変化球を投げますが、そこまでの投手ではない。しかし、彼らは5回と4回を分けて投げてきて、目一杯の球を投げてくる。これだけタイプが違うとアジャストするのが難しい」

 酒井は「僕は腕を振るのが持ち味」というスタイルでガンガン腕を振ってくるタイプ。ストレートの球速も140キロだ。一方の坂本はシンカーやスライダーをコントロールよく投げる。さらにいえば、酒井のストレートは高めに伸び、坂本は低めが真骨頂だ。

 ストレートと変化球、高めと低め。

 持ち球も違えばタイプも違うし、投げ込んでくるコースも異なっている。高校生レベルではそう簡単にアジャストできるものではない。

朴訥として物静かな2年生・酒井と、お兄さんタイプの3年生・坂本。

 この二人がさらに面白いのは、学年が違い、性格が全く違っているところだ。

 2年生の酒井は朴訥とした語り口が特徴の物静かな性格だ。何を聞いても、「腕を振るだけ」という言葉しか出てこない。「後ろに坂本さんがいるので、僕は思い切りいける」と話し、とにかく腕を振り、打者に立ち向かっていく。

 一方の3年生の坂本は頼りになるお兄さんタイプだ。言葉もしっかりしているし、きりっとした表情で雄弁に語る。「『1』を付けているので、先発完投したい気持ちもあります。でも、酒井が先発で頑張ってくれているので、僕は負けられない」。

 島田達二監督の継投も見事にはまっている。

 監督が常に口にするのが、「すべてを下級生に背負わせるのはかわいそう。だから、酒井がある程度まで投げてくれたら、勝負どころの終盤は3年生の坂本に任せようと思っている」という言葉だ。

【次ページ】 「芯に当たっているはず」でも野手の頭を越えない理由。

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