昨年の交流戦、巨人の対日本ハムの成績は2勝2敗。日本シリーズでも第4戦までは五分ながら5戦、6戦を連勝し7年ぶりの日本一を勝ち取った

すでに決戦は始まっている!
交流戦が変えた日本シリーズの戦略。

鷲田康 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Yasushi Washida

photograph by Naoya Sanuki

すでに決戦は始まっている!交流戦が変えた日本シリーズの戦略。

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チーム・選手名
原 辰徳

 1994年の日本シリーズ。森祇晶監督率いる西武と激突した長嶋ジャイアンツは第1戦を桑田真澄投手で落とした。

 この試合で桑田は2回に清原和博内野手の本塁打を浴びるなど4失点。試合は11対0という西武の圧勝に終わったが、試合後に投手陣をあずかる堀内恒夫コーチは不敵な笑みを浮かべて、こんな話をしている。

「4年前の失敗は繰り返さない。そのためにきょうは桑田を先発させたんだ。本当のシリーズは明日から始まるぞ」

過剰なデータ分析で西武打線に委縮してしまった巨人。

 4年前の失敗とは何だったのか――。

 1990年のシリーズは、藤田元司監督率いる巨人が西武に4連敗。岡崎郁現2軍監督をして「野球観が変わった」と言わしめる屈辱的な完敗に終わったシリーズだった。

 そのとき巨人は9月8日にリーグ優勝を決め、シリーズまで約1カ月半の長い調整期間があった。開幕直前には1週間の合宿を行い、準備万端で臨んだシリーズだったが、誤算は徹底的に行ったはずのデータ分析にあった。

「あのときはあまりにデータばかりがありすぎて、『ここが危ない』『あそこは投げちゃダメだ』というミーティングばかりをやっていた。いわば西武打線の凄さだけをインプットしてしまった。それが逆に投手の腕を縮こませることにつながったんだ」

かつての日本シリーズで有効だった“第2戦必勝主義”とは?

 だからこのシリーズでは、初戦の試合前のバッテリーミーティングで、あえて全投手を前に桑田にこんな指令を出していた。

「お前のきょうの一番の仕事は実際に対戦して使えるデータと使えないデータを振り分けることだ。抑えるに越したことはないが、勝ち負けは二の次でいい」

 そうして桑田は試合後のミーティングで使えるデータと使えないデータを選別。「ここに投げておけば大丈夫」と1時間近くにわたって西武打線を丸裸にした。

 それがこの年の巨人の日本一奪回への第一歩となったわけだ。

 いわゆる日本シリーズの“第2戦必勝主義”。この流儀はもちろんこの年の巨人だけではない。巨人ではV9時代から脈々と受け継がれ、その流れを汲む西武の広岡達朗監督、そして森監督も重視した戦い方だった。

<次ページへ続く>

【次ページ】 「交流戦は日本シリーズの戦い方も大きく変えた」原監督。

筆者プロフィール

鷲田康

1957年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、報知新聞社入社。およそ10年にわたり読売ジャイアンツ取材に携わった。2003年に独立。日米を問わず野球の面白さを現場から伝え続け、Numberほか雑誌・新聞で活躍。著書に『僕のメジャー日記 松井秀喜』(文藝春秋)、『ホームラン術』(文春新書)がある。


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