フットボール“新語録”BACK NUMBER
豪州代表・アレックスの目に映った、
ザックジャパンが強い本当の理由。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2012/07/03 10:31
今野泰幸と競り合うオーストラリア代表のアレックス。2011年から所属する清水エスパルスでは、中盤のインサイドのポジションで活躍。高原直泰に代わってFWで起用されることもある。
「日本代表はまるでクラブチームのように、互いを理解してプレーしていた」
アレックス (清水エスパルス、オーストラリア代表)
先日、清水エスパルスの練習場に行ったときに、アレックスに声をかけた。6月12日にブリスベンで行なわれたW杯アジア地区最終予選のオーストラリア対日本の感想を聞きたかったからだ。
日本戦において、アレックスはJリーグのときとは別人のようなプレーを見せた。
清水では2列目でプレーすることが多いが、日本戦ではケイヒルと2トップを組んでFWとして出場したのである。すると身長183cmとずば抜けて背が高いわけではないのに、ほとんどのロングボールに競り勝ち、日本のDFラインを苦しめ続けた。試合後、センターバックの栗原勇蔵が「アレックスってああいう選手でしたっけ?」と驚いていたほどだ。
アレックスは、代表でのポジションについてこう説明した。
「清水では基本的に中盤だけれど、オーストラリアではストライカーの役割を任されている。代表の場合、前にいた方がよりボールに触ることができるので、自分としてもその方がやりやすいんだ」
オージーフットボールばりの戦術は「あの試合だけ」。
この試合、オーストラリアはボールを持つとすぐに前線にロングボールを蹴り込み、“オージーフットボール”(ラグビーを基にした球技で、大きく前方にパントキックをして、それを飛び上がってキャッチするシーンが多いスポーツ)のようなサッカーをしていた。
試合後、本田圭佑が「(次もオーストラリアが同じやり方をするのであれば)アホか、秘策があるかのどっちかだと思います」とくさしたように、サッカーの進化に逆行するようなプレースタイルだった。
だが、アレックスは「ああいう戦術は、あくまであの試合だけ」と弁明する。
「オーストラリアの場合、特にホームではフィジカルの激しいぶつかり合いが求められるし、ピッチもひどい状態だった。だから、より速くアグレッシブにプレッシャーをかけて、ボールを奪ったらロングボールを蹴るというやり方を採用したんだ。来年6月に日本で行なわれる試合では、また違う戦術になると思う。もっと引いて、カウンターを狙うやり方になるんじゃないかな」