スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
リーガの覇権をかけた天王山クラシコ。
もし、レアルが勝ちに行くのなら?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/20 10:31
攻撃だけでなく、守備でも献身的な動きを見せるディマリアの起用法が鍵か。
一時は10ポイントあった勝ち点差が4ポイントまで縮まったとはいえ、今週末に行なわれるクラシコは12月10日の一戦(レアル・マドリー 1-3 バルセロナ)以上にマドリー有利の条件が揃った戦いとなる。
引き分けでもほぼリーグ優勝を手中にできる上、今回はファンやメディアから攻撃的姿勢を求められるホームゲームではないので、はっきり堅守速攻に徹することができるからだ。
だがそういった背景を無視してこの試合を1つの勝負と考えた時、どちらが勝利に近いかと言えばそれはバルサだろう。過去の戦績はいわずもがな。舞台はカンプノウだし、しかもここ最近のバルサは目覚ましい復調ぶりを見せはじめ、一時期は封印していた3-4-3による圧倒的なゲーム支配も戻ってきている。
そのバルサに対し、マドリーはどう戦えばよいのか。今回はそれを考えてみたい。
序盤の得点機を逃さず、ボールを回して守勢を避けるべき。
正直なところ、基本的には堅守速攻+ピンポイントでハイプレスを仕掛けるという、これまで通りのやり方がベストのように思える。一度パスワークのリズムを掴んでしまうとバルサからボールを奪うのは困難になるし、そもそもフルパワーでのハイプレスを継続できるのはせいぜい10分が限度。そう考えると、やはり勝負をかけるべきは立ち上がりのタイミングになる。
過去の対戦でもここまではできており、実際に昨年12月のリーグ戦、今年1月18日のコパ・デル・レイ第1レグ(マドリー 1-2 バルサ/同月25日の第2レグでは2-2の引き分け)では共に立ち上がりにハイプレスがはまって先制点を手にする思い通りの展開に持ち込めている(昨年8月のスーぺルコパの2戦は、2-2、3-2でバルサが優勝しているが、試合日時が離れているのでここでは述べない)。
マドリーが改善すべき点はその後、一度ゲームが落ち着いてからの戦い方にある。
立ち上がりのハイプレスによりうまく先制できた場合ですら、その後もボール奪取のたび縦に攻め急いでしまう悪癖が出てしまうのだ。確かにバルサからゴールを奪いたければ相手が守備陣形を整える前に素早くフィニッシュに至るカウンターが一番効率的ではある。ただ、それだけではゲームプランとしては限界があるのも事実。早々に先制点を手にした先述の2試合が最終的に逆転負けで終わっていることがその証拠だ。
相手の守備ブロックに綻びが生じるまで執拗にボールを動かし続けるバルサの攻撃を耐え凌ぐには、心身ともに多大な消耗を要する。だからマドリーはボール奪取後に速攻一辺倒にならず、丁寧にショートパスをつないでポゼッションの時間を長くし、自分達が守備に走る時間を減らす意識を持つ必要がある。