野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
マリン名物の大声援が復活!!
ロッテ躍進を支える「和」の心。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/04/14 13:00
“伝説の応援団員”と呼ばれる男・ジントシオが奮闘。
3月3日。2010年の千葉マリンスタジアム初戦となったこの試合は、オープン戦とはいえ重要な意味を含んでいた。焦点はひとつ。今季の応援はどうなるのか?
たかが、応援ではない。それは「和」を掲げる新生西村マリーンズにとっては、生命線にも等しい重要な問題である。
多くの人たちの不安を乗せて開場したライトスタンド。その演舞台には、“伝説の応援団員”と呼ばれる男が立っていた。2004年までマリーンズの応援をリードしてきたジントシオ氏の復活。的確かつファンを団結させるウィットに富んだリードは、往年のファンからは神格視されるほどの存在だという。
だが、今年は歌詞のマイナーチェンジも含めると8割方の応援が変更されている。昨年までの応援に慣れ親しんだファンは戸惑いを隠せず、伝説の男をもってしても、厳しい道のりが容易に予想された。
それでも、ジン氏は声を張りファンをアジり続けていた。
「和の心! 和の心! 和の心!」
その大声援に甲子園の応援に慣れた今岡でさえ驚いた!!
「声援が大きくて、緊張しました」
3月26日の本拠地開幕戦後、甲子園の大歓声に慣れ親しんだはずの今岡誠は、マリンスタジアムの歓声に驚きを隠さなかった。
「昨年までは敵でうらやましい応援だなと思いながら投げていたんですけど、今年は本当に心強い味方で……最高です」
4月1日の楽天戦で移籍後初勝利を挙げた川越英隆はお立ち台で嬉しそうに言った。移籍してきた彼らの発言は、マリンのライトスタンドのもたらす力が、昨年までの応援と何ら変わりのないことを証明していた。
それを確かめに、先週末の西武3連戦。3月3日以来、ライトスタンドへと足を運んだ。
まだ、歌詞カードが手放せない人が目立つが、誰もが声を出している。あちこちで、卵から孵ったばかりのメダカの大群のようにファンが跳ねまわっている。
そこには、'05年のライトスタンドにも比類する圧倒的なグルーヴ感が確かに存在した。スタンドにいた若い女性ファンがこんなことを言う。
「昨年のことがあるから、余計に応援しなくちゃと思うんです。今年は球団も選手もやる気になってくれているし、応援歌が歌えなくても、何かしたくてウズウズしませんか?」
ファン同士の思い、選手の思い、そして、多分、球団の思い。誰かの思いが誰かへとつながっていく。これが、「和」の心だろうか。嬉しくなって、声を出した。年甲斐もなく、ジャンプしたい衝動に駆られた。
楽しい。
これが、マリンのライトスタンドだ。
勝っても負けても、応援が好きでも嫌いでも、今、このスタジアムには、同じ思いを持つ人たちの歓びに溢れている。
この「和」が続く限り、マリーンズの快進撃は止まらない。